ニコチンアミドリボシドは雌ラットにおける抗癌剤誘発末梢神経障害を緩和する [医学一般の話題]

ビタミンB3(ナイアシン)とニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide ;NAD+)の前駆体であるニコチンアミドリボシド(NR)が、げっ歯類モデルにおいて、抗癌剤のパクリタキセルによる誘発末梢神経障害を減少させたと報告。

パクリタキセルは非小細胞肺癌、乳癌、卵巣癌、子宮体癌、および胃癌などに使用されている抗癌剤。その作用機序は、微小管構造蛋白であるチューブリンの重合を促進して脱重合を抑制し、細胞分裂時の紡錘体の形成を阻害して細胞周期をG2/M期で停止させると言われている。パクリタキセルの末梢神経障害は、主に、微小管への作用による軸索障害が原因と考えられている。

モデルの“Sprague-Dawleyラット”に対し、 パクリタキセル6.6 mg/kgの3静脈注射を5日間実施。NRを、開始7日前より注射後24日間継続して毎日200mg/kgを経口投与した。この用量によって NAD+の血中濃度が50%増加し、パクリタキセルの効果を妨げずに触覚過敏症を減少させた。 経口アセチル-L-カルニチン(acetyl-L-carnitine;ALCAR)100mg/kgの前処置では、パクリタキセル誘発触覚過敏症または回避行動は防止できず、ALCAR自体が触覚過敏を作り出した。

これまでの研究で、ニコチンアミドは、酵素阻害剤と併用すると生体内の腫瘍増殖を抑制する。また、肝臓と乳癌の進行を抑制する。NAD+前駆体ニコチンアミドの毎日1gの経口投与は、新しい非メラノーマ皮膚癌の発生率を 23% 減少させた。

抗癌剤による末梢神経障害は現時点で発現機序が不明であり、臨床試験もエビデンスが不十分で有効な治療法は確立されていない。ビタミンB3の前駆体が有効であれば、患者にとって朗報となる。
 
出典文献
Nicotinamide riboside, a form of vitamin B3 and NAD+ precursor, relieves the nociceptive and aversive dimensions of paclitaxel-induced peripheral neuropathy in female rats.
Hamity, Marta, White, Stephanie, Walder, Roxanne, et al.,
Pain: May 2017 - Volume 158 - Issue 5 - p 962–972 doi: 10.1097/j.pain.0000000000000862

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