エイトピック皮膚炎に対するサイトカイン阻害剤 dupilumabの効果 [薬とサプリメントの問題]

中等度または重度エイトピック皮膚炎 (AD) 患者に対する、サイトカイン阻害剤 dupilumabの効果が無作為化試験によって示唆されている。

中等度または重度AD 患者の約 40%が、治療後16 週間において完全ないしほぼ完全緩解。また、ほとんどの患者で効果は52 週間持続。湿疹面積と重症度指数 (EASI)は、患者の 3 分の 2で少なくとも75%改善。

同様の結果は、 6 歳~17歳の子供を含むフェーズ II 試験で、EASI スコアがベースラインから12 週間で76% 減少したと報告されている。

2014年7月22日、Sanofi社とRegeneron社は中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者を対象とした dupilumabの第IIb相試験の結果、いずれの用量においても用量依存的に主要評価項目を改善したとするプレスリリースを発表。この研究結果から、IL-4/IL-13経路がアレルギー疾患の根本的役割を担っている可能性が示唆された。

つまり、dupilumabはエイトピック皮膚炎の発症に重要な役割を果たすIL-4およびIL-13のシグナル伝達を阻害する、完全ヒトモノクロナール抗体。IL-4/IL-13のシグナル伝達を阻害することが、エイトピック性疾患に対する新しい治療法となる可能性が示された。

エイトピック皮膚炎は、現在、全世界の成人の1~3%が罹患していると言われている慢性炎症性疾患。アメリカにおいて、700~800万人の成人患者中約160万人が中等症および重症であり、コントロール不良な状態にあると言われている。

dupilumabは、免疫療法におけるファーストインクラスの薬剤であり、米国食品医薬品局(FDA)からエイトピック皮膚炎に対する画期的治療薬(Breakthrough Therapy)の指定を受けている(2014年11月)。

ほぼ完全緩解以上の40%は数値としては高くはないが、コントロール不良の中等症以上が対象であることを考慮すればその意義は大きく、患者さんにとっては朗報となる。但し、免疫は複雑であり簡単に解決するとは思いがたい。さらに、長期的なフォローが必要。

私は、エイトピック皮膚炎に対して、「Flick Method」と名付けた刺法を行っている。一定の効果があることは確かで、拙著「絞扼性神経障害の鍼治療:カテゴリー;出版のお知らせを参照」の中で解説している。しかし、症例数が少なく、重症例に対する有効性など、未だ、不明な点も多い。免疫システムの異常に関わる疾患に対して、鍼刺激によって確実に有効なアプローチができるのか、自信は無いが考えてはいる。

因みに、「atopic dermatitis」のatopicは「エイトピック」であり、「アトピー」という言葉は無い。この国では、医師のような優秀な人たちでさえデタラメ言葉を平然と使っていることが理解できない。

出典
Blauvelt A, et al.,
Long-term management of moderate-to-severe atopic dermatitis with dupilumab and concomitant topical corticosteroids: A 1-year, randomized, placebo-controlled phase III trial (CHRONOS).
American Academy of Dermatology 2017. annual meeting.

MedPage Today, March 06, 2017,
Dramatic Responses to Biologic in Atopic Dermatitis.
- High marks for dual cytokine inhibitor in adults, children by Charles Bankhead -

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