アメリカ大学医師学会による腰痛治療の新ガイドラインに一言 [腰痛関連]

この提言は、委員会による成績評価システム(ACP)を使用し、腰痛に対する非侵襲的治療の無作為化比較試験やシステマティックレビュー(2015 年 4 月まで)に基づいている。

推奨 1:
急性または亜急性の腰痛患者のほとんどは、治療に関係なく時間をかけることで改善する。経皮的温熱療法(evidenceは中等度)。マッサージ、鍼治療、または脊椎マニピュレーション(evidenceは低度)。薬物治療を行う場合は、非ステロイド性抗炎症薬や筋弛緩剤を使用する(evidenceは中等度)。(Grade:強い推薦)

推奨 2:
慢性腰痛症患者では、運動、集学的リハビリテーション、鍼灸、マインドフルネスストレス低減 (evidenceは中等度)、または、太極拳、ヨガ、モータ制御運動、漸進的弛緩法、筋電図バイオフィードバック、低レベルレーザー療法、オペラント療法、認知行動療法、および脊椎マニピュレーション (evidenceは低度) を行い、薬物治療は選択しない。(グレード: 強い推薦)

推奨 3:
非薬物療法で改善しない患者では、第一選択として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID;イブプロフェン、ナプロキセンなど)ないしは、トラマドールやデュロキセチンを第二選択とする。これらの治療で改善しない場合で、 benefitがリスクを上回る場合にはオピオイドを使用する(依存症や過量投与による死亡リスク)。(グレード: 弱い推奨、適度なevidence)

一言
推奨1の、急性期における温熱治療について。経皮的なごくマイルドな温熱であれば、気持ちが良い程度であり、効果は無くとも有害ではないと言える。しかしながら、急性痛に対して、例えば、入浴や極超短波などによる温熱刺激は悪化させることはあっても軽快することは無く、むしろ有害である。

急性の腰痛症で、重症期に腰部や放散痛の領域などに電気鍼を行えば、翌日に症状は悪化する。早い場合には治療直後に痛みで動けなくなる。病状による効果の違いや、治療法の誤りによる悪化例などが考慮されず、多くのレビューを単純に集計して評価された結論に意味は無い。

動くことが困難なほどの強い痛みを訴える急性の腰痛であれば、如何なる治療法を行っても早期に軽快させることはほぼ不可能。痛みが中等度以下(炎症の程度による)であれば、鍼治療はブロック注射よりも即効性があると考えている。その可否は、病態の判断に加え、刺法、ポイントの選択とその内部組織への正確なヒットによるところが大きい。この経験知によるさじ加減が医師には理解できず、単純に、教科書どおりの経穴に刺して鍼治療を行ったつもりになっている。

鍼治療に関する医師の研究の多くは、病態による治療ポイントや刺法の選択が問われず、「伝統的鍼治療」に基づくとして教科書通りの経穴に単純に施鍼している。

今回の新ガイドラインの根底には、NSAIDsがプラシーボと比較して全く効果が認められないとする多くの研究結果があるものと考えられる。鍼治療の有用性が認識されていることは歓迎する。しかし、腰痛の根本的な病態解明や、病態に即した鍼治療効果のメカニズム究明が必須であるはずだが、全くの手つかずになっている。このように新しい知見も無く、一般常識的なつまらないガイドラインが臨床に役立つとは考えられない。

出典文献
Amir Qaseem, Timothy J. Wilt, Robert M. McLean, et al.,
Noninvasive Treatments for Acute, Subacute, and Chronic Low Back Pain: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians.
Annals of internal medicine. 2017 Feb 14; doi: 10.7326/M16-2367.

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