急性虚血性脳卒中への血管内血栓切除の効果への疑問 [医学・医療への疑問]

急性虚血性脳卒中患者に対する血管内機械的血栓除去後の臨床転帰を、静脈内組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)の使用を含む標準的治療と比較したメタアナリシス研究の結果、機能的転帰と血管造影血管再生率は若干高くなりました。

データは、MEDLINE、EMBASE、CINAHL、 Google Scholar、およびCochrane Libraryにて、無作為化臨床試験の研究を検索して収集。

機能の改善は、90日目の修正ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で、スコアが0-2、および24時間後の血管造影による血行再建。

8件の試験から計2423名の患者を同定(平均年齢67.4歳 [SD14.4]女性46.7%)。 1313名 [46.7%]が血管内血栓除去術、1110名が標準治療。

血管内治療の全体的ベネフィットのオッズ比は1.56(OR,1.56;95% CI, 1.14-2.13; P=0.005)。

90日後の機能の独立性 (mRS score, 0-2)は、血管内治療で557/1293名(44.6%; 95% CI, 36.6%-52.8%)、標準治療では351/1094名(31.8%; 95% CI, 24.6%-40.0%)。リスク差は12%(95% CI, 3.8%-20.3%; OR, 1.71; 95% CI, 1.18-2.49; P=0.005)。

尚、mRS score, 0-2とは、全く症状なし(0)から、これまでの活動の全てはできないが身のまわりのことは援助なしでできる、軽微な障害(2)までを指します。

24時間後の血管造影による血管再生の血管内治療と標準治療の比較は75.8% vs 34.1%( OR, 6.49; 95% CI, 4.79-8.79; P<0.001)で、6倍以上改善しました。

しかし、症候性頭蓋内出血では70 events(5.7%)vs 53 events(5.1%)、OR, 1.12(95% CI, 0.77-1.63; P=0.56)で有意差はありません。

また、90日の全原因死亡率でも、218 deaths(15.8%)vs 201(17.8%)、OR, 0.87(95% CI, 0.68-1.12; P=0.27)で有意差はありませんでした。

血管内治療による有害事象の有無は、要約には記されていませんので不明です。また、費用対効果も分かりません。しかし、日常生活動作(ADL)が自立可能レベルまでの患者が1割多かった点は評価できると思います。また、評価は90日時点ですので、その後機能はさらに回復する可能性も考えられます。しかし、長期的にはどうでしょうか。

現在、日本で使用されている機械的血栓除去デバイスは2種類あるようです。2007年より使用が認められた Merci Clot Retriever は、コルクスクリューのような形状をした金属製ワイヤーです。マイクロカテーテルを鼠径部より挿入して頚動脈に留置し、閉塞部位によって最適な血管を選択してデバイスを挿入し、血栓を除去して閉塞血管の再開通を行います。

比較的大型の主幹動脈の閉塞のように血栓溶解療法の効果が期待できない場合や、血栓溶解療法が禁忌である患者さんに対して、脳血管内治療による血栓除去術が行われるようです。処置後、約半数に再開通が認められ、血栓溶解療法と併用することで約75%で再開通が認められるとのことです。

素人目には、排水管の詰まりを掃除する、先端がコイル状のワイヤーを思い浮かべます。どーも乱暴な処置にしか思えないのですが。さらに、素朴な疑問としましては、このワイヤーで掻き回された後、血栓は完全に消失するのでしょうか。血栓溶解療法と併用しているとは言え、細かな粒となって抹消の細動脈を閉塞させるリスクは無いのでしょうか。その場合、多発的なマイクロエンボリズムを起こし、高齢者では認知症を進行させないでしょうか。

あくまでも、素人の素朴な疑問ですが。

出典文献
Jetan H. Badhiwala, Farshad Nassiri, Waleed Alhazzani, et al.,
Endovascular Thrombectomy for Acute Ischemic Stroke
A Meta-analysis
JAMA. 2015;314(17):1832-1843. doi:10.1001/jama.2015.13767.

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0