急性心筋梗塞患者への酸素療法はむしろ有害と報告 [生体にとって酸素とは]

急性心筋梗塞患者において、クレアチニンキナーゼレベルによって推定した梗塞サイズは、通常の酸素飽和度(幾何平均ピーク比1.26, P=0.01)に比べて高い者ではより大きく、むしろ有害となる可能性が指摘されています。

6ヶ月後に、心臓MRIによって測定された梗塞サイズの中央値は、20.3対13.1g(P=0.04)で、僅かですが酸素療法で高くなっています。著者は、差は無いと記していますが統計的には有意です。

AVOID試験では、臨床的エンドポイントに差は見られませんが。

心筋梗塞の再発は5.5% 対 0.9%(P<0.01)、不整脈も40.4% 対 31.4%(P=0.05)と、何れも、酸素療法で高くなりました。

治療学書を見ますと、全ての心筋梗塞症例に対して、先ず、酸素投与することが推奨されていますが、低酸素状態にない者にまで酸素を投与することに意味は無く、むしろ有害であり、医師の妄想と言えます。

低酸素血症の非存在下では、酸素療法によって利益を得ることはないはずです。その行為は、冠状動脈の血流を減少させる冠状血管抵抗を増大させ、再灌流傷害を引き起こすことは基礎科学からの証拠が示しています。

我々は酸素に囲まれ、これを吸い込んで生きていますので、その酸素が体内の組織にとっては極めて毒性が高い物質であることを知っている人は、極めて少数であると思われます。

好気的生物にとって酸素は必須の物質ですが、それはミトコンドリアによるATPの産生に必要だからです。しかし本来は、身体内は嫌気的環境になっており、酸素が存在して良い組織や状況はごく限られています。肺包気あるいは動脈血中の酸素濃度および分圧は、それぞれ16%、100mmHgですが、毛細血管では6%、40mmHg、細胞レベルでは10mmHgまで低下します。体内の酸素濃度は、代謝異常を来さぬように極めて厳格にコントロールされています。それは、酸素が必須の物質であると同時に、生体内においては極めて毒性が高い物質だからです。

さらに、最近は、生体内における酸素の多彩な機能が解ってきています。

出典
AHA: Extra Oxygen No Help in Acute MIPublished: Nov 20, 2014
By Crystal Phend, Senior Staff Writer, MedPage Today
Reviewed by Zalman S. Agus, MD; Emeritus Professor, Perelman School of Medicine at the University of Pennsylvania

Primary source: American Heart Association
Source reference: Stub D, et al "A randomized controlled trial of oxygen therapy in acute ST-segment elevation myocardial infarction: The Air Versus Oxygen in Myocardial Infarction (AVOID) Study" AHA 2014.

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