持久力運動と筋のテロメア長は相関したと報告 [運動健康法という妄想]

 持久力トレーニングに従事する高齢選手は平均的活動レベルの高齢者と比較してより長いテロメア長をもっており、最大酸素摂取量がテロメア長と正に相関していたと報告されています。

 テロメアは細胞年齢の潜在的なマーカーであり、物理的な老化プロセスに関連付けられています。また、長期的な持久力トレーニングと高い有酸素運動能力(VO2max)は生存率の改善と関連しており、運動の動的効果は加齢とともに明らかであるされています。しかし、運動トレーニングと最大酸素摂取量とテロメアの長さとの関連性は一貫していませんでした。この研究は、若者と高齢者の筋のテロメア長が、持久性運動トレーニングと最大酸素摂取量に関連付けられているかを評価したものです。

 持久力訓練を受けた高齢選手は、平均的活動レベルの高齢者と比較してより長いテロメアを有していました(T/S ratio 1.12±0.1 vs. 0.92±0.2, p = 0.04)。しかし、若い持久力訓練を受けた選手のテロメア長と若い非競技者で差はありませんでした(1.47±0.2 vs. 1.33±0.1, p = 0.12)。

 全体的に、T / S比と最大酸素摂取量(VO2max) との間に強い相関が認められました(r = 0.70, p = 0.001)。また、持久力訓練を受けた選手では、最大酸素摂取量とT / S比との間に強い相関が認められました(r = 0.78, p = 0.02)。しかし、非アスリートの参加者では、対応するアソシエーションは弱い相関性を示しました(r = 0.58、P = 0.09)。

 この結果にて、「持久性運動トレーニングはテロメア長を維持することによって、老化プロセスの減速を調節できることを示唆している」と、著者はPLoS ONEのオンラインに記しています。

 しかし、事はそう単純ではありません。テロメア長イコ-ル寿命ではありませんので、この結果によって老化を抑制できるとは言えません。

 またこの研究の限界として、サンプルサイズが小さく男性のみであること。テロメアの長さは同じ個体の中でも臓器によって違うこと(最近の研究では、筋肉のテロメアは積極的に白血球のテロメアと相関していると述べられていますが)。ビタミンや抗酸化物質の摂取の情報や酸化ストレスの測定など、不明または未測定要因の残留交絡因子が除外されていないことなどが挙げられます。

 これらの問題以前に、人間の老化は複雑かつ漸進的なプロセスであり、これを分析するのに適した分子マーカーは未だ存在していません。年表の直接の関数としての個人の健康状態の判定は、非常に高感度で特異的なバイオマーカーを必要とします。生物学的年齢は、細胞、組織、臓器や器官のレベルで構成されています。ベイカーとスプロット基準の条件を満たすことができるような、生物学的年齢を検証できるマーカーが必要となります。

 バイオマーカーのホストがテストされていますが、2つのマーカーがこの基準を満たす候補となる可能性があります。それは、このテロメアとCDKN2Aです。但し、テロメア長はかなり弱いバイオマーカー(*1)であることが証明されています。 CDKN2Aはテロメア長と時系列の年齢の両方に優れていると証明されています(*2.3)。

 テロメア長の個人間の変動は数多くの社会経済やライフスタイル、およびエピジェネティックな交絡因子の影響に加え、数多くの方法論的問題を含んでいます。

 このような観点から、テロメアは、老化病の研究として大規模臨床あるいは実験室での研究には非常に適していますが、個人の健康状態を判断するなどとして商業的に利用することは時期尚早です。この点にくれぐれも留意してほしいのです。

Osthus I, et al.
Telomere length and long-term endurance exercise: Does exercise training affect biological age? A pilot study
PLOS ONE 2012; DOI: 10.1371/journal.pone.0052769.

*1. Koppelstaetter C, et al. Aging Cell. 2008; 7:491-7.
*2. McGlynn LM, et al Shiels PG. Aging Cell 2009; 8:45-51
*3. Shiels PG. J Gerontol. 2010 65(8):789-91

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