経絡構造 (解釈法の統一) [経絡とは]

 「黄帝内経霊枢:経脈篇」の原文の解釈に先立ち、先ず、基本的なルールを設定しました。その理由は、解釈法を一定にして整合性をもたせることにあります。
 もう1つの条件として、内経の全文中に実際に記述された経穴と、その出現領域を確認しました。これは私の仮説を検証するためのもので、「草創期においては、経穴は体表より捉えやすい領域にのみ存在した」とする、考えにもとずいています。つまり、経絡が臓器周辺などの深部を通過する部位の体表には、当初経穴は想定されてはいなかったと予想しました。この考えが正しければ、私が主張している、経絡が体深部を走行している領域と無穴領域は一致することになり、仮説の正当性を実証することができます。これは、実際に100%一致しています。

 経絡構造の究明は、原典の文意を忠実に解釈すること、その視点は現代医学の知識を排除した、古代の人間の自然観による、肉眼的解剖によるものです。また、勝手な医学用語の追加補足は許されません。このことを踏まえて以下のルールを設定しました。

解釈のルール
1) 陰経は血管,陽経は神経であると想定し,例外は基本的に認めない.
2) 身体観察における姿位,その名称と位置関係には一貫性がある.その基本肢位は,現代医学に於ける関節可動域表示の際の基本肢位に等しいと判断した.即ち,解剖学的肢位を基本として,前腕は手掌面を体幹へ向けた状態で観察し記述している.本稿でも,同様の基準にて統一的に解釈する.
例 臑外前廉=上腕外前側 (大腸経) 臑内=上腕内側 ( 肺経,心包経)
臑外 =上腕外側 (三焦経) 臑内後廉=上腕内後側(心経)
臑外後廉=上腕外後側 (小腸経)
3) 経脈の走行上の部位を示す名詞や標識となる動詞の解釈は一定にし,語句は一切変更しない.
4) 神経・血管は構造的な接点(交通,吻合)を通じて自由に連絡させる.(系統解剖学などの医学常識の排除)
5) 流注の方向は,医学的な神経の方向性や血液の循環とは無関係に,自由な方向に走行させる. 
6) 太い血管では,内部を数本の経脈が流れることも想像したものと想定し,血管網や神経叢では数本の経脈が共通ルートとして走行することも認める.
7) 末端部分では,複数の神経及び,神経と血管の交通を認める.(一般的に隣接する領域に分布する2つの皮神経は走行途中で互いに吻合するのが通例であり,血管への神経の分布も肉眼的に観察したものと推測)
8) 流注文の空白部分は前後関係より類推し,その部分は[ ]で示す.また,説明を補足した部分は( )で記す.
9) 臓腑の医学的解釈については,一部,私の解釈を使用する.           例) 三焦:網嚢を含む腹膜全体(上焦:固有網嚢上部で横隔膜と接する部分・中焦:網嚢前庭及び網嚢峡部・下焦:腹膜の膀胱直腸窩付近)・ 脾=脾臓 ・肺系=肺動脈
10) 内経中に出現する経穴は目標とする神経,血管が皮膚表面より特定し易い部位に限られ,臓腑周辺や骨の内側では存在しないものと推定し,この範囲を無穴領域と規定する.
11) 解釈した経絡の走行経路は,正経脈・絡脈・奇経の全てにおいて整合性があることが必須条件となる.即ち,内経における経絡流注の全文が説明されることが求められます。私の研究では、ほぼ100%(原文の記述の説明不足とやや無理な解釈部分があるため)解釈できています。(これまでの研究報告で、経絡の全流注を説明できたものは存在しない)

 以上の様な基本的条件のもとに解釈した経絡の構造は、先ず、正経十二経脈の「手の太陰肺経」より、次回以後述べていきます。

追伸
本記事は、拙著「中医学の誤謬と詭弁:2015年1月出版」にも記されています。本書は、黄帝内経における臓腑経絡概念の本質を解読・検証したものです。市販はしておりませんが、希望される方には、個人的に販売しています。申し込み方法は、カテゴリー「出版のお知らせ」をご覧ください。


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