ヒアルロン酸は悪性腫瘍の転移を促進する [ヒアルロン酸]

最近の研究で、ヒアルロン酸(または、ヒアルロナン)はあらゆる種類の悪性腫瘍の転移を促進することが明らかになっている。

また、これまで胆汁排泄促進剤として使用されていた、蛍光物質の4-methyl-umbelliferone(MU)がヒアルロン酸合成を特異的に阻害することが判明している。さらに、このMUを経口投与すると、悪性腫瘍の転移・再発を抑制できることも明らかになっている。

悪性腫瘍の転移には、悪性腫瘍自身が生合成するヒアルロン酸と、転移する組織・器官が生合成するヒアルロン酸の両方が関与している。MUの経口投与によって、悪性腫瘍および腫瘍が転移する組織・器官の両者で、ヒアルロン酸の合成が抑制されて転移も抑制される。これは、マウス由来悪性黒色腫細胞(B16F10細胞)および培養ヒト皮膚線維芽細胞を使った転移実験で確認されている。

ヒアルロン酸は、ウロン酸であるグルクロン酸とN-アセチルグルコサミンがグリコシド結合によって繰り返し結合したもので、生体内のあらゆる組織・器官の細胞外マトリックスに普遍的に存在しているもの。

最近の分子生物学や糖鎖生物学的研究の進歩によって、このヒアルロン酸は細胞の発生、分化、増殖、再生などの様々な生理機能を制御することが明らかになっており、同時に、老化、創傷治癒、炎症、さらに、悪性腫瘍の転移にも関わっていることも分かってきた。

ヒアルロン酸は強い抱水性(水を巻き込む力)を有して粘性が高いため、関節液などの組織・器官の湿潤を保持することが知られている。加齢によって、ヒアルロン酸が低下した皮膚は乾燥するが、ヒアルロン酸を注入することで瑞々しくなるため、皮膚のアンチエイジングとして皮膚への注入が一般的に行われている。

しかしながら、炎症の悪化や悪性腫瘍・癌の摘出手術後の再発・転移を促進させることも知っておくべき。

引用文献

1)Kosakai R. Watanabe K, Yamaguchi Y : Overproduction Hof hyaluronan by expression of the hyaluronan synthase Has2enhances anchorage-independent growth and tumorigenicity. Cancer Res, 59: 1141-1145, 1999.

2)Sohara Y.Ishiguro N, et al. : Hyaluronan activates cell motility of v-Src-trnsformed cells via Ras-mitogen -activated protein kinase and phosphoinositide 3-kinase-Akt in a tumor -specific manner . Mol Biol Cell, 12 : 1859-1868, 2001.

3)Yoshihara S, Kon A, Kudo et al.A hyaluronan synthase suppressor , 4-methylumbelliferone, inhibits liver metastasis of melanoma cells. FEBS Lett, 579: 2722-2726, 2005.

4)Morohashi H, et al. Inhibitory effect of 4-methyl-esculetin on hyaluronan synthesis slows the devlopment of human pancreatic cancer in vitro and in nudemice. Int J Cancer, in press.
 
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