早期乳癌における乳房温存手術後の放射線照射の省略は有害性に影響しない [医学一般の話題]

低リスクの早期乳癌患者における乳房温存手術後の放射線療法の省略は局所再発発生率の増加と関連していたが、遠隔再発や全生存率に有害な影響は認められなかった。

対象は、ホルモン受容体陽性、リンパ節陰性、T1またはT2原発性乳癌(最大寸法≤2cmの腫瘍)を有する65歳以上の女性。合計1326人の女性が登録され、乳房温存手術および補助内分泌療法で治療された。658人が乳房全体の照射(40〜50Gy)を受け、668人が照射を受けないようランダムに割り当てられた。

主要エンドポイントは局所乳癌再発。局所再発、乳癌特異的生存期間、最初のイベントとしての遠隔再発、および全生存期間を評価。

追跡期間中央値は9.1年で、10年以内の局所乳癌再発の累積発生率は、非放射線療法群で9.5%(95%信頼区間[CI]、6.8〜12.3)、放射線療法群で0.9%(95%CI、0.1〜1.7)で、非放射線療法群では10倍高くなった(ハザード比、10.4;95%CI、4.1〜26.1;P<0.001)。

非放射線治療群では局所再発は多かったが、10年間の遠隔再発発生率は非放射線治療群で1.6%(95%CI,0.4〜2.8)、放射線治療群で3.0%(95%CI,1.4〜4.5)と、非放射線治療群の方が低かった。

10年時点での全生存率は、非放射線治療群で80.8%(95%CI、77.2〜84.3)であったのに対し、放射線治療群では80.7%(95%CI、76.9〜84.3)と両群でほぼ同程度であった。局所再発の発生率および乳癌特異的生存率も両群間で有意差はなかった。

出典文献
Breast-Conserving Surgery with or without Irradiation in Early Breast Cancer
List of authors.
Ian H. Kunkler, Linda J. Williams, Wilma J.L. Jack, David A. Cameron, et al.
N Engl J Med 2023; 388:585-594 DOI: 10.1056/NEJMoa2207586