2型糖尿病における飲料別消費量と死亡率との関係とは [医学・医療への疑問]

アメリカにおける、2型糖尿病患者の前向きコホート研究の結果、加糖飲料 (SSB) と 全脂肪乳の摂取量が多いほど全死因死亡率と心血管疾患 (CVD)の発生率が高く、コーヒー、お茶および普通の水の摂取では低くなりました。

参加者は、ベースライン時およびフォローアップ中に 2 型糖尿病と診断された 15,486 人(看護師の健康調査: 1980-2018; 医療専門家のフォローアップ調査: 1986-2018)。 飲料の消費量は、検証済みの食物摂取頻度アンケートを使用して評価し、2 ~ 4 年毎に更新。主な評価項目は全死因死亡で、副次評価項目はCVD の発生率と死亡率。

平均 18.5 年間の追跡期間中に、3,447 人 (22.3%) CVDをが発生し、7,638 人 (49.3%) が死亡。 多変量調整後、飲料の最低摂取量のカテゴリーと最高摂取量のカテゴリーを比較すると。

全原因死亡率のハザード比は、加糖飲料 (SSB) で 1.20 (95% confidence interval 1.04 to 1.37)、人工甘味料 (ASB) 0.96 (0.86 to 1.07)、フルーツ ジュース 0.98 (0.90 to 1.06)、コーヒー0.74 (0.63 to 0.86)、お茶 0.79 (0.71 to 0.89)、普通の水の場合は0.77 (0.70 to 0.85)、低脂肪乳 0.88 (0.80 to 0.96)、0.96 まで、全脂肪乳の場合は1.20 (0.99 to 1.44) 。

個々の飲料と CVDの発生率および死亡率との間に同様の関連性が観察されました。 特に、SSB の摂取は、心血管疾患の発生リスク(hazard ratio 1.25, 95% confidence interval 1.03 to 1.51) 、および心血管死亡率の増加と関連(1.29, 1.02 to 1.63)。

全脂肪乳と加糖飲料 (SSB)は、全原因および心血管死亡率を約2~3割増加させる。

20021 年度において、世界中で約5億 3,700 万人の成人が糖尿病に罹患しており、2045 年までに 7 億 8,300 万人に増加すると予測されていると記されています。

また、別の報告では、糖尿病予備群としての糖尿病前症(正常なグルコース調節と糖尿病の中間段階)が、アメリカでは成人の3 人に1 人、世界中では約7億2000万人が罹患していると記されています(1)。糖尿病前症は、空腹時血糖値 100 ~ 125 mg/dL、75 g の経口ブドウ糖負荷 2時間後の血糖値 140~199mg/dL、またはHbA1Cが5.7% ~ 6.4 % または 6.0% ~ 6.4%によって定義されます。

さらに、 アメリカでは、糖尿病前症者の約10%が毎年糖尿病に進行しているとのこと。メタアナリシスでは、ベースラインでの糖尿病前症は死亡率の増加と心血管イベント発生率の増加に関連 (6.6 年間の死亡率については 10,000 人年あたり 7.36、心血管疾患については 10,000 人年あたり 8.75 の超過絶対リスク)。

しかし、私には疑問なのです。

以前に投稿した記事、「糖尿病患者は心血管疾患による死亡が大幅に少ない」で述べましたが、糖尿病患者の心血管疾患による死亡率は健康者と比べて大幅に低く、特に、2型糖尿病では顕著に減少することが報告されています(2.)。

抜粋しますと、この報告は、1998から2012年までと2014年までフォローされた、スウェーデン国立糖尿病登録患者を対象にした研究結果によるもの。

心血管イベントの傾向は、cox 回帰と標準化された発生率で推計。コントロールは、一般から無作為に選出し、患者ごとに、年齢、性別、住居地域によってマッチング。

1型の糖尿病患者とコントロールとの比較(sentinel outcomes per 10,000 person-years)

・全原因死亡率: −31.4 /1万人/年(95% confidence interval [CI], −56.1 to −6.7)
・心血管疾患による死亡:−26.0 (95% CI, −42.6 to −9.4)
・冠状動脈性心臓疾患による死亡: −21.7 (95% CI, −37.1 to −6.4)
・心血管疾患のための入院:−45.7 (95% CI, −71.4 to −20.1)

2型糖尿病患者の絶対変化

・全原因死亡率:−69.6 (95% CI, −95.9 to −43.2)
・心血管疾患死亡率: −110.0 (95% CI, −128.9 to −91.1)
・冠状動脈性心臓疾患による死亡:−91.9 (95% CI, −108.9 to −75.0)
・心血管疾患による入院:−203.6 (95% CI, −230.9 to −176.3)

糖尿病患者はコントロールよりも致死的心臓血管の転帰が少なく、特に、2型では約 40%と大きく減少しています。逆に、疾患としては重症である1型糖尿病患者の減少は約26%で、減少率は2型よりも少なかった。

さらにつまらないことを言わせてもらえば、現時点で糖尿病と糖尿病前症を合計すると、世界全体では12億5,700万人(人口は約80億人)と推測されます。仮に、このまま増加して半数以上となった場合でも、少数者が正常だと言えるのでしょうか。

出典文献
Beverage consumption and mortality among adults with type 2 diabetes: prospective cohort study
BMJ 2023; 381 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2022-073406 (Published 19 April 2023)
Cite this as: BMJ 2023;381:e073406
Le Ma, Yang Hu, Derrick J Alperet, Gang Liu, et al.

1.
Diagnosis and Management of Prediabetes
A Review
Justin B. Echouffo-Tcheugui, Leigh Perreault, Linong Ji, Sam Dagogo-Jack,
JAMA. 2023;329(14):1206-1216. doi:10.1001/jama.2023.4063

2.
Mortality and Cardiovascular Disease in Type 1 and Type 2 Diabetes
Aidin Rawshani, Araz Rawshani, Stefan Franzén, Björn Eliasson, Ann-Marie Svensson, et al.,
N Engl J Med 2017; 376:1407-1418April 13, 2017DOI: 10.1056/NEJMoa1608664