急性腰痛後の慢性腰痛発症を予測する予後因子とは [腰痛関連]

急性腰痛後、約40%の人々が3か月以上続く慢性的腰痛を訴えるが、急性エピソードの時点で慢性腰痛(cLBP)の発症を予測することは困難。この研究は、cLBPの神経生物学的および心理的危険因子を特定することを目的として行われた。対象は急性 LBP 患者 120名で、6 か月のフォローアップを伴う前向きコホート研究。

分析は、痛みの強さまたは障害の程度を連続変数とする多変数線形回帰モデル。二次分析には、二分変数は、6 か月での LBP の存在 (しきい値の痛みの強度と障害の程度) を含む多変数ロジスティック モデル。

感覚皮質と運動皮質の興奮性の低下、ベースライン時の痛みの強さ、うつ病、ストレスの強さ、および痛みの破局化が6 か月における痛みの強さの最も強力な予測因子 (R2 = 0.47) でした。

また、高年齢と破局的な痛みが6か月時点での障害の最も強い予測因子でした (R2 = 0.30)。 感覚皮質と運動皮質の興奮性、脳由来神経栄養因子の遺伝子型、うつ病と不安、LBP の病歴とベースライン時の痛みの強さは、6 か月で LBP を報告した人と報告しなかった人の間で区別された (C 統計値 0.91)。神経生物学的危険因子を多変数線形回帰モデルに追加すると、6 か月間の疼痛強度の分散のさらに 15% が説明された。

これらの調査結果は、LBPの転帰を予測しようとする際に、神経生物学、心理学、症状関連、および人口統計学など、様々な領域にわたって多様な表現型特性を評価することの重要性を裏付けている。たとえば、クラスター分析を使用した縦断的研究では、6 か月のフォローアップで急性 LBP からの回復が最悪だった個人は、腫瘍壊死因子の血清濃度が高く、より高いうつ病様症状を示した。

尚、慢性疼痛における破局化とは痛みに対して注意が囚われることや、無力感、痛みの脅威を過大評価することなどの認知過程で、痛みの難治化を説明するfear-avoidance modelの一部を構成するものであり予後に強く関係する。破局化の評価法には疼痛破局的思考尺度(PCS)があり、反芻,無力感,拡大視の3つの下位尺度がある。痛みに囚われた思考や不安をそのまま無批判に体験するマインドフルネスが破局化を和らげると言われ、治療としての有用性が示唆されている。

まとめると、高年齢と急性時の痛みの強さが6か月後における障害の最も強い予測因子であり、さらに、感覚皮質と運動皮質の興奮性、脳由来神経栄養因子の遺伝子型、うつ病と不安、LBP の病歴とベースライン時の痛みの強さが6 か月間の疼痛強度に関連した。

要するに、急性発症の際の痛みの強さと性格的傾向、および遺伝子型が慢性化に影響するということであり、およそ予測できる範疇である。この知見が、慢性化を食い止めることに結びつくのであろうか。

出典文献
Cortical function and sensorimotor plasticity are prognostic factors associated with future low back pain after an acute episode: the Understanding persistent Pain Where it ResiDes prospective cohort study
Jenkins, Luke, C, Chang, Wei-Jua, Buscemi, Valentinaa, Liston, Matthewa, et al.
PAIN 164(1):p 14-26, January 2023. | DOI: 10.1097/j.pain.0000000000002684