新型コロナ治療薬ベブテロビマブは新興の COVID 株への効力を失った [薬とサプリメントの問題]

今年の2月11、米食品医薬品局(FDA)は米イーライリリーの新型コロナ治療薬ベブテロビマブ(bebtelovimab)静脈注射剤(モノクローナル製剤)に対し、緊急使用許可(EUA)を認めた。対象となるのは、重度の疾患を発症するリスクがある軽度から中等度で、 COVID-19 の入院していない患者に対する緊急使用。

この薬は、新型コロナウイルスのスパイクタンパクに結合してウイルスの細胞への侵入を抑制することで有効性を発揮するもので、変異株と闘うための新規の治療薬として期待された。

bebtelovimabおよびTixagevimab/cilgavimab (Evusheld)は、現在流行している Omicron バリアントの約 60% に対して無効である可能性が高く、特に免疫不全の個人に対する保護に大きなギャップが生じると、ハーバード大学医学部主導のコンソーシアムの研究者は述べている。

Tixagevimab-cilgavimabも、2021 年 12 月に、免疫不全の個人および重度のワクチン反応の既往歴のある人における COVID-19の曝露前予防薬 (PrEP) として緊急使用許可が付与されたが、既に、BQ.1 に対する効力を失っている。BQ.1.1、BA.4.6、BF.7、BA.5.2.6、および BA.2.75.2などの亜種は、11 月 12 日の時点で、現在出回っている Omicron の亜種の約 60% を占めている。

ほとんどの場合、新規の亜種が以前の亜種に取って代わる。そのため、誰がどの亜種を持っているか、シーケンシングのためのより迅速な診断ができることは重要だが、そもそも、RNAウイルスは変異が速く、亜種の多様性は増加する。

したがって、モノクローナル抗体が役に立たつ可能性は低く、ワクチン接種は依然として最も効果的なツールである。現在、アメリカでも日本においても、ほとんどの人が一次ワクチン接種を受けているため重症化するリスクは低下しており、問題となるのは免疫不全や他の基礎疾患をもつ患者である。

出典文献
Monoclonal Antibodies May No Longer Be a Match for Emerging COVID Strains
— Evusheld, bebtelovimab losing potency as circulation of BQ.1, BQ.1.1 grows
by Ingrid Hein, Staff Writer, MedPage Today November 18, 2022