乾燥肌やエイトピック皮膚炎の乳児への保湿剤の塗布はその種類によっては食物アレルギーリスクを高める [免疫・炎症]

重度の早期発症エイトピック皮膚炎または湿疹の乳児の約5人に1人は、小児期にピーナッツまたは他の食品に対するアレルギーを発症する。
(日本では一般的に、医師でさえ“アトピー性皮膚炎”と言っているが、これは全くの誤り。本稿では、正しい発音に近いカタカナで表記している。)

乾燥肌やエイトピック皮膚炎の赤ちゃんに保湿剤や皮膚軟化剤を塗布することは一般的な方法。しかし、2020 年の EAT 研究データの二次分析で、乳児期の保湿剤の頻繁な使用が食物アレルギーの発症リスクを高める可能性があることが示唆されている。

一方、保湿剤の使用とその後の食物感作との間に有意な関連性は示されなかったとする報告もある。結果の違いの要因として、使用する皮膚軟化剤の種類がサブ分析の結果を左右する可能性がある。

イギリスでは、オリーブオイルまたはベビーオイルによるベビーマッサージが一般的な方法だが、これらのオイルは皮膚バリアを強化するのではなく、ラウリル硫酸ナトリウムを含む保湿剤とともに、皮膚バリアを破壊して皮膚を細菌感染しやすくする可能性があると示唆されている(Brough)。マウスの研究では、皮膚に油があると、皮膚を介した細菌やその他の病原体の移動を促進することも示されている(特に、塗布する手指の清潔に注意)。

2020年、Sayantani Sindher, Helen A Brough,らによるパイロットスタディで、乾燥肌または湿疹のある45人の子供(3か月〜7歳)に対し、ワセリンベースの保湿剤ではなく、トリ脂質ベースの保湿剤を5週間毎日使用すると皮膚バリア機能が改善されることを発見した。

別の小規模な研究では、乾燥肌または湿疹のある16人の乳児にトリ脂質ベースの保湿剤(EpiCeram)を12週間の全身塗布によって、血漿IgG4:IgE比が増加し、一方、ワセリンベースの保湿剤(Aveen:最も頻繁に使用される皮膚軟化剤)の使用はIgG4:IgGの低下と関連した。
(アレルギーから保護するための自然耐性は、血漿 IgG4/IgE 比の増加と関連している。)

“EpiCeram”は、皮膚の自然な pH と脂質組成 (セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸の比率が 3:1:1) を模倣したトリリピッド スキン バリア クリームで、従来の保湿剤よりも皮膚バリア機能の改善に優れていることが示されている。

Aveenoと比較して、EpiCeramは寛容原性 IL-10+ 発現 (p<0.0001) および LAP+発現 CD4+ (p=0.002) T 細胞の有意な増加と、炎症誘発性 IL-4+ 発現 CD4+ T 細胞の有意な減少と関連していた (p = 0.004)。

このパイロット研究の結果は、AD の免疫病因と上皮の役割、およびそれに続く T 細胞活性化経路に関与するサイトカインの理解を深め、トランスレーショナル臨床研究と治療の設計に向けての予備的な調査となる。

ピーナツ特異的 IgG4 (EpiCeram で増加) と牧草特異的 IgG4 (変化なし) に対して異なる効果が見られる。著者らは、これは、食物 (皮膚) と吸入アレルゲン (気道)との異なる暴露経路に関連している可能性があると推測している。また、IL-4 などの炎症誘発性サイトカインの減少、および IL-10 や LAP などの抗炎症性サイトカインの増加に伴う、Th2 と Th1 のシフトの違いも検出されており、TGF-β を介して媒介される免疫抑制効果があることも示されている。

これらのデータは、適切な皮膚軟化剤の使用によってエイトピック性疾患を予防できる可能性があり、予防ガイドラインで食品の早期導入に追加されるモダリティになる可能性があることを示唆している。

出典文献
Finding Potential Ties Between Baby-Soft Skin and Risk for Food Allergy Later On
— Are moisturizers to blame for increased chances for childhood food allergies?
by Salynn Boyles, Contributing Writer November 13, 2022, MEDPAGE TODAY

Increases in plasma IgG4/IgE with trilipid versus paraffin/petrolatum-based emollients for dry skin/eczema
Sayantani Sindher, Shifaa S Alkotob, Melanie N Shojinaga, Helen A Brough,et al.
Pediatr Allergy Immunol. 2020 Aug; 31(6): 699–703.
Published online 2020 May 6. doi: 10.1111/pai.13253