ラテンアメリカの都市における死亡率に与える気温の変化 [医学・医療への疑問]

ラテンアメリカの326都市における、年齢および原因特異的死亡率に対する周囲温度の寄与を調べた研究において、周囲温度への曝露による影響は熱関連よりも寒冷関連の方が大きかったが(私の解釈では)、何故か、論文の結論では熱関連が重視されていた。

本研究では、2002年から2015年の間にラテンアメリカの326都市で毎日の周囲温度と死亡率の非線形分布ラグ縦断分析を実施。約29億人年のリスクで15,431,532人の死亡が観察され、全原因死亡の内、熱による超過死亡率(EDF)(最適値を超えるすべての温度の累積効果)は0.67%(95%信頼区間(CI)0.58–0.74%)、寒冷関連で5.09%(95%CI 4.64–5.47%)。

全年齢の熱関連による超過死亡の割合0.42%(95%CI 0.38–0.45%)よりも、寒冷によるEDFが大幅に高く、すべての寒冷で5.09%(95%CI 4.66–5.42%)、極寒(≤5パーセンタイル、都市固有の観測温度)で1.03%(95%CI 0.99–1.06%)。

心血管疾患では、全年齢の合計で超過死亡率は9.12% (8.48, 9.70)、全熱関連0.69% (0.64, 0.74)、過剰熱0.38% (0.36, 0.40)、全寒冷8.43% (7.79, 9.01)、過剰寒冷1.52% (1.48, 1.55)。

呼吸器疾患の全年齢では、同様に、合計10.73% (9.78, 11.50)、全熱関連1.10% (1.02, 1.18)、過剰熱0.54% (0.50, 0.57)、全寒冷 9.62% (8.55, 10.39)、過剰寒冷1.58% (1.51, 1.63)。 (65歳以上では若干異なっている。詳細は文献の表2を参照されたい)

Zhaoらによる、メタ予測変数を使用する研究では、全年齢のEDFが寒さで8.52%、熱で0.91%の全年齢における超過全死因死亡率が報告されている。この世界の寒冷EDF(8.52%)は、ラテンアメリカの都市における寒冷地EDF推定値(4.71%)のほぼ2倍。.Zhaoらによる2021年の分析は、43カ国、750カ所(ラテンアメリカとカリブ海の66カ所を含む)で気温と死亡率の関連を推定し、これらの推定値を0.5°×0.5°のグリッドサイズ(約55×55 km)で世界的に外挿した。

死亡リスクは最適温度以下および最適温度以上の両方で線量反応的に増加したが、過剰な気温変化による死亡リスクの増加は、1℃上昇当たりで5.7%(RR = 1.057)、1℃の低下では3.4%(RR = 1.034)で、気温上昇の方が急峻であった。これらの知見は、極端な暑さがより頻繁になるにつれて、少なくとも最初は死亡リスクが顕著に増加する可能性があることを示唆している。

極端に暑い気温における1℃の上昇に伴う死亡率の増加は、例えば、メキシコ沿岸部、アルゼンチン北部、およびブラジル南部の都市などで見られ、地理的変動を有することが観察された。これらの地域の住民は、現在および短期的にはわずかな気温の上昇の下でも暑さに対して特に脆弱である可能性がある。

.気温関連の死亡率の不均一性を説明する都市レベルの要因(物理的、社会的、または政策的特性)をより深く理解することは、気候変化の将来の影響を緩和するための効果的な行動を特定するのに役立つかもしれない。例えば、温度関連の罹患率に対する医療へのアクセス、建物の設計の改善、公共の暖房/冷房センター、緊急警報システムなど。

しかし、全体として、死亡者の割合は周囲熱よりも周囲の寒さに起因しており、これは他の設定での同様の分析からの知見を裏付けている(1.2.3.4.)が、本論文では、暑さのみを強調していることが不可解だ。

出典文献
City-level impact of extreme temperatures and mortality in Latin America
Josiah L. Kephart, Brisa N. Sánchez, Jeffrey Moore, Leah H. Schinasi, et al.
Nature Medicine (2022)https://doi.org/10.1038/s41591-022-01872-6

二次文献
1.
Burkart, K. G. et al. Estimating the cause-specific relative risks of non-optimal temperature on daily mortality: a two-part modelling approach applied to the Global Burden of Disease Study. Lancet 398, 685–697 (2021).

2.
Zhao, Q. et al. Global, regional, and national burden of mortality associated with non-optimal ambient temperatures from 2000 to 2019: a three-stage modelling study. Lancet Planet Health 5, e415–e425 (2021).

3.
Guo, Y. et al. Global variation in the effects of ambient temperature on mortality: a systematic evaluation. Epidemiology 25, 781–789 (2014).

4.
Gasparrini, A. et al. Mortality risk attributable to high and low ambient temperature: a multicountry observational study. Lancet 386, 369–375 (2015).