高度免疫グロブリンはCOVID-19入院患者への有効性が認められず [医学一般の話題]

COVID-19(新型コロナ感染症)から回復したドナーに由来する、過免疫静脈免疫グロブリン(hIVIG)を使用する受動免疫療法は、SARS-CoV-2(ウイルス名)などの感染に対する特異的療法ですが、ランダム化臨床試験による所見は限られている。

無作為化二重盲検プラシーボ対照第3相試験の結果、レムデシビルおよび他の標準治療に加えてhIVIGの単回注入は、プラシーボ(生理食塩水)とレムデシビルおよび標準治療と比較して、無作為化後7日目において良好な臨床転帰を示さなかった。

2020年10月8日から2021年2月10日までの期間に、発症後12日以内で急性終末臓器不全のないCOVID-19入院患者を対象とし、レムデシビル(禁忌ではない場合)あるいは他の標準治療に加えてhIVIGを投与する群、および同量の生理食塩水を投与するプラシーボ群に1対1の割合で割り付けた(n = 301 hIVIG、n = 292プラシーボ)。フォローアップは28日間。

有効性の主要評価項目は7日目における患者の臨床状態で、呼吸状態および肺外合併症を考慮した7段階(症状なしまたはわずか~死亡まで)の順序尺度にて評価した。また、安全性の主要評価項目は、7日目までの死亡、重篤な有害事象(臓器不全、重篤な感染症を含む)、およびGrade3/4の有害事象の複合とし、28日目はGrade3/4の有害事象を除く7日目の病態。有効性および安全性の主要評価項目は、症状持続期間、抗スパイク中和抗体の有無、およびその他のベースライン因子。解析は、修正intention-to-treat(mITT)法による。

参加者の38%が4 L / min以上の酸素補給または高流量酸素のいずれかを受け、96%がレムデシビルを投与され、49%が無作為化前にレムデシビルを開始し、56%がコルチコステロイドを投与され、61%が無作為化前に少なくとも予防用量のヘパリンを投与されていた。

プラシーボと比較して、hIVIGグループは7日目で調整されたORは1.06 (95% CI 0.77-1.45; p = 0.72)で差は無し。7日目の複合安全性の結果の割合も、hIVIG(24%)グループとプラシーボグループ(25%)で同様(OR 0.98, 95% CI 0.66-1.46; p = 0.91)。

発症時の症状の持続期間によって内因性中和抗体の存在は異なり、6日未満で27%、10〜12日間では67%。

ベースラインで中和抗体陰性の患者では、hIVIGグループの患者の22.7%およびプラシーボグループの34.3%が、複合安全性の結果に含まれる少なくとも1つのイベントを経験した(OR 0.51、0.29 – 0.90 ; pinteraction = 0.001)。

この研究でhIVIGの有効性が示されなかったことは、抗体療法がすでに免疫応答を開始している患者に利益をもたらさない可能性を示し、進行性COVID-19の他の特性がhIVIGの有用性に影響を与える可能性がある。また、一部の患者ではCOVID-19の炎症が進行した可能性があり、体液性免疫反応を増強することが有用ではない可能性がある。

事前に指定された仮説に反し、最も早く治療された患者または入室時に内因性中和抗体を持たない患者における7日目の利益の証拠は認められなかった。症状発現から6日以内に治療を受けた患者(参加者の23%)では、hIVIGによる良好な転帰のオッズはプラシーボよりも低く、相対オッズは0.74。中和抗体陰性の患者の48%のうち、良好な結果の相対オッズ(hIVIG対プラシーボ)は0.99であり、試験開始時に中和抗体陽性の患者と差は認められず、全身性炎症のベースライン測定による治療効果に差はなかった。

エントリー時のC反応性タンパク質によるサブグループ分析では、7日目の通常の結果または7日目と28日目に評価された複合安全性の結果のいずれも治療効果に差異は認められなかった。

hIVIGの注入が一部の患者に害をもたらした可能性がある。7日目または28日目で複合安全性の結果に全体的な違いはなかったが、エントリー時に抗体陽性を中和していた患者の間で安全性イベントのリスク増加が観察され、安全性イベントの相対オッズは2.21だった。7日目-28日目までの安全性イベントを考慮した場合には違いは見られず、抗体陰性の参加者を中和するための7日目と28日目の両方で、複合安全性結果のリスクはプラシーボグループと比較してhIVIGで低かった。

個人的意見として、抗体療法がすでに免疫応答を開始している患者に利益をもたらさないことは、むしろ当然のことではないだろうか。さらに、新型コロナワクチンの複数回におよぶ接種が本当に有効であるか疑問。

出典文献
Hyperimmune immunoglobulin for hospitalised patients with COVID-19 (ITAC): a double-blind, placebo-controlled, phase 3, randomised trial.
The ITAC (INSIGHT 013) Study Group †
Journal Lancet (London, England). 2022 02 05;399(10324);530-540. pii: S0140-6736(22)00101-5.
Published:January 27, 2022DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(22)00101-5
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