院外心停止の昏睡状態に対する中等度対軽度の治療的低体温の効果に差は無し [医学一般の話題]

軽度の低体温(34℃)と比較して、中等度の低体温(31℃)が院外心停止による昏睡状態の生存者の臨床転帰を改善するか否かを調査した研究結果では、180日における死亡率および神経学的転帰不良を減少させなかったと報告されている。

院外心停止における昏睡状態は高い死亡率と重度の神経学的損傷を生じる。現在のガイドラインでは、32℃から36℃で24時間の目標温度管理を推奨しているが、小規模の研究ではより低い体温をターゲットにすることの利点が示唆されていた。

本研究は、カナダ、オンタリオ州東部の三次心臓ケアセンターで実施された、単一施設、二重盲検、ランダム化、臨床優越試験。 2013年8月4日から2020年3月20日までの間に合計389人の院外心停止患者が登録され、最終フォローアップは2020年10月15日。

介入患者は、24時間、31℃(n = 193)または34℃(n = 196)の目標体温とする温度管理にランダムに割り当てられた。

主な結果は、180日における全原因による死亡または神経学的転帰の不良。神経学的転帰は、障害評価尺度を使用して評価され、神経学的転帰不良は5より大きいスコアとして定義(範囲、0〜29、29が最悪の転帰[植物状態])。副次的結果は、180日での死亡率や集中治療室での滞在期間などの19項目について評価。

一次分析に含まれた367人の患者(平均年齢61歳, 女性69人[19%])のうち、366人(99.7%)が試験を完了。主要転帰は、31℃群の89/184人の患者(48.4%)、および34℃群の83/183人の患者(45.4%)で発生(リスク差、3.0%[95%CI、7.2%-13.2 %];相対リスク、1.07 [95%CI、0.86-1.33]; P = 0.56)。

二次的結果の19項目うち、18は統計的有意差は無し。 180日での死亡率は、31℃と34℃の目標温度で、それぞれ43.5%と41.0%(P = 0.63)。集中治療室での滞在期間の中央値は、31℃グループの方が長かった(10日対7日; P = 0.004)。 31℃群と34℃群の有害事象のうち、深部静脈血栓症は11.4%対10.9%で発生し、下大静脈の血栓はそれぞれ3.8%と7.7%で発生。

尚、“Abstract”のみ読んでいるため、二次的結果の19項目の内容については不明。

出典文献
Effect of Moderate vs Mild Therapeutic Hypothermia on Mortality and Neurologic Outcomes in Comatose Survivors of Out-of-Hospital Cardiac Arrest
The CAPITAL CHILL Randomized Clinical Trial
Michel Le May, Christina Osborne, Juan Russo, et al.
JAMA. 2021;326(15):1494-1503. doi:10.1001/jama.2021.15703