50歳未満では抗生物質の使用が結腸癌リスクを高くする [薬とサプリメントの問題]

抗生物質の使用が、50歳未満の患者(調整後3.78、95%CI 1.60-8.92)の近位大腸癌のリスクの増加と関連している。一方、高齢層(調整後0.89、95%CI 0.72-1.11)の患者の間では関連していなかった。

また、結腸癌では、50歳以上は調整済みOR 1.09(95%CI 1.01-1.18)、50歳未満は調整済みOR 1.49(95%CI 1.07)で、50歳未満は49%増加。しかし、直腸癌との関連は観察されなかった。

抗生物質のほとんどのクラスは、直腸癌、または遠位結腸癌とは有意な関連性はなかった。しかし、早期発症群の近位結腸癌に対しては、キノロンは調整済みOR7.47(95%CI 1.40-39.94)で7.47倍、スルホンアミド/トリメトプリムではOR 4.66(95%CI 1.66-13.09)で4.66倍とリスクを高くした。

このネストされたケースコントロール研究では、1999年から2011年に診断された7,903の結腸・直腸癌症例(5,281の結腸癌と2,622の直腸癌)を特定し、30,418の対照と照合した。 結腸直腸癌の患者のうち、445人は50歳未満であり、45%が曝露期間中に抗生物質を処方されていた。

早期発症型結腸・直腸癌の発生率が世界的に増加している一方で、同時に抗生物質の消費量も増加している。 抗生物質の投与によって腸内細菌叢の構造と多様性を大幅に変えることで結腸・直腸癌の発症に影響を与えると、以前より示されている。

結腸直腸癌の発症における抗生物質の作用を究明し、腸の健康に対する抗生物質の長期的影響を評価するにはさらにより多くの研究が必要となる。個人的には、近位結腸癌に対して特定の抗生物質でよりリスクが高くなることが興味深い。

DNAジャイレース (DNA gyrase)とは、細菌が持つDNAトポイソメラーゼII型の1種で、細菌のDNA複製には欠かせない酵素の1つ。キノロンは、β-ラクタム系抗生物質と並ぶ代表的抗菌薬の基本骨格。しかし、β-ラクタム系抗生物質とは異なり微生物に由来しない合成抗菌薬。キノロン系抗生物質は真核生物のDNAトポイソメラーゼII型は阻害せず、細菌のDNAトポイソメラーゼII型〈すなわちDNAジャイレース〉のみを選択的に阻害し、生体に影響を与えずに細菌の増殖のみを阻害する。

スルホンアミド系薬剤は、p-アミノ安息香酸のジヒドロプテロイン酸への変換を競合的に阻害する(細菌による葉酸合成および最終的にはプリンおよびDNA合成に必要)。ヒトは葉酸を合成せずに食事によって摂取するため影響は少ない。トリメトプリムはジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への還元を妨げる。

出典文献
Are Antibiotics Linked to Early-Onset Colorectal Cancer?
— With cases increasing globally, researchers look to these commonly used drugs
by Mike Bassett, Staff Writer, MedPage Today July 3, 2021

Primary Source
Global rise in early-onset colorectal cancer: an association with antibiotic consumption?
Perrott S, et al, World Congress on Gastrointestinal Cancer(WCGC)2021; Abstract SO-25.

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