IL23が実験的自己免疫性脳脊髄炎の悪化と慢性化に関与する [免疫・炎症]

中枢神経系における局所インターロイキン(IL)23産生が、重度の対麻痺と運動失調の表現型を伴う実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の悪化と慢性化を引き起こすことが実証されている。

IL23の星状細胞特異的発現を伴うトランスジェニックマウスモデル(GF-IL23マウス)は、小脳組織破壊を伴う進行性運動失調表現型を自発的に発症し、くも膜下および血管周囲腔で最も顕著な大量のB細胞を伴う炎症性浸潤を示す。

IL23は、多発性硬化症の病因における重要なサイトカインだが、神経炎症の過程に対する局所的な影響はまだ十分には定義されていない。本研究では、自己免疫性神経炎症におけるCNS特異的IL23合成の局所的影響を明らかにするために、GF-IL23マウスとWTマウスでMOG35-55EAEを誘発し、組織学、フローサイトメトリー、トランスクリプトームによる分析を実施した。

中枢神経系局所におけるIL23の産生が、重度の対麻痺と運動失調の表現型を伴うEAEの悪化と慢性化につながることを実証。さらに、増強された多胞性神経炎症は、脊髄だけでなく、前脳、脳幹、および主に脱髄の持続を伴う小脳にも存在した。IL23は、白血球、特にB細胞、CD4+細胞だけでなく、γδT細胞および活性化マイクログリア/マクロファージの蓄積を伴う顕著な炎症誘発性応答を惹起する。さらに、トランスクリプトーム解析により、リンパ球活性化マーカー、ケモカイン、および補体系の構成要素のアップレギュレーションを伴う、炎症誘発性サイトカイン環境を強化されることが示された。

最近、IL-23を欠くマウスを使った実験から、自己免疫性炎症に重要な役割を果たしていることがわかってきている。IL-23のこうした影響は、IL-6、IL-17および腫瘍壊死因子(TNF)を生産する病因性のCD4+T細胞集団の分化を促進することによっていることが、“The Journal of Experimental Medicine”に発表されている。

IL-23は独自のp19サブユニットと、IL-12のp40サブユニットからなるヘテロ二量体。IL-12は、インターフェロンγ(IFN-γ)を生産するヘルパーT(TH1)細胞の分化に重要な働きをするサイトカイン。IL-12とIL-23は共にp40サブユニットを持つが、それぞれの機能は異なっている。例えば、IL-12欠失マウスは炎症性の自己免疫疾患に罹患し易いが、IL-23を欠くマウスはこうした病気に対して抵抗性を示す。

炎症性自己免疫病の治療において、IL-23が新たな治療標的になる可能性がある。

出典文献
Astrocyte-specific expression of interleukin 23 leads to an aggravated phenotype and enhanced inflammatory response with B cell accumulation in the EAE model.
Louisa Nitsch, Simon Petzinna, Julian Zimmermann, Linda Schneider, et al,
Journal of Neuroinflammation volume 18, Article number: 101 (2021)

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