アスピリンは IL-11を介して調節性T細胞を保護する [医学一般の話題]

アスピリンの新たな効果が示されている。アスピリン (アセチルサリチル酸)は、炎症性プロスタグランジンおよびトロンボキサンの合成に必要な酵素シクロオキシゲナーゼを不活化する非ステロイド性抗炎症薬で、最も広く使用されている。

さらに、低用量アスピリンは、多発性硬化症 (MS) のモデルである、実験的自己免疫性脳炎 (EAE) を有するマウスの臨床症状を抑制することがわかった。

多発性硬化症(MS)は、中枢神経系内で発現するミエリンタンパク質を自己免疫性T細胞が標的とすることで生じるヒト疾患で、FoxP3を発現する制御性T細胞(Tregs)の数が減少して自己反応性T細胞が活性化している。

アスピリンは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)特異的T細胞により引き起こされるEAEの進行、およびそれに伴う血管周囲肥厚、炎症および脱髄を抑制した。このアスピリンの効果は、CD25+FoxP3+Tregsの存在を必要としていた。

アスピリンはT細胞においてFoxp3およびインターロイキン-4(IL-4)の量を増加させ、ナイーブT細胞からTヘルパー17(TH17)およびTH1細胞への分化を抑制した。またアスピリンは、Tregsの生成に必要な、転写因子CREBが介在するIL-11の転写も増大させた。また、FoxP3+Tregsの比率の維持、およびEAEからのマウスの保護はIL-11のみで十分であり、IL-11の中和は、Tregの分化に対するアスピリンの作用を相殺してEAEを増悪させた。

これらのデータは、低用量アスピリンレジメンが MS患者に恩恵をもたらす可能性があることを示唆するとともに、これまで特徴づけされていなかったアスピリンの新たな作用様式が明らかとなった。

出典文献
Aspirin ameliorates experimental autoimmune encephalomyelitis through interleukin-11–mediated protection of regulatory T cells
Susanta Mondal1, Malabendu Jana1, Sridevi Dasarathi1, Avik Roy, Kalipada Pahan,
Sci. Signal. 27 Nov 2018: Vol. 11, Issue 558, eaar8278
DOI: 10.1126/scisignal.aar8278

IL-11の興味深い機能として、辻岡 洋(大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任助教)らの研究で、アフリカツメガエル幼生尾の再生芽における様々な組織に分化する未分化細胞の出現に、IL-11がこれら細胞の誘導・維持に働くことが報告されている。

interleukin-11 induces and maintains progenitors of different cell lineages during Xenopus tadpole tail regeneration
Hiroshi Tsujioka, Takekazu Kunieda, Yuki Katou, et al.,
DOI:10.1038/s41467-017-00594-5
https://www.nature.com/articles/s41467-017-00594-5

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