IL-33 / ST2シグナル伝達が根性痛に寄与する [腰痛関連]

IL-33とその受容体であるST2シグナル伝達が、非圧迫性椎間板ヘルニアのラットモデルにおける根性痛の発生および進行において重要な役割を果たすことが示唆されている。

脊髄で起こる免疫および炎症反応は、椎間板ヘルニアに起因する根性痛の進行において中心的な役割を果たす。IL-33は、神経系の広範な炎症反応および自己免疫性障害を引き起こす。

本研究は、背側脊髄におけるIL-33とその受容体ST2の発現を調査し、その阻害が、非圧迫性椎間板ヘルニアのラットモデルにおいて、疼痛関連行動を減弱するか否かを検証したもの。

先ず、遺伝子サイレンシングのために、IL-33(LV-shIL-33)を標的とする短いヘアピンRNAをコードするレンチウイルスベクターを構築。次に、非圧迫性椎間板ヘルニアラットモデルを作成した。手術後1日目に、ラットの背骨にLV-shIL-33(5または10μl)を注射して機械的閾値を21日間観察して評価。

さらに、脊髄腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、IL-1β、IL-6、シクロオキシゲナーゼ2(COX-2)の発現レベル、マイトジェンの活性化(MAPK)、およびNF-κB経路を評価し、IL-33 / ST2シグナルの根性痛への寄与に関連するメカニズムについて推測。

非圧迫性椎間板ヘルニアラットとは。
腰椎上で正中線の背側切開を行い、多趾筋をL4-L6棘突起に沿って除去し、右脊髄神経根およびDRGは椎弓切除術を通して露出。 2つの尾骨間椎間板から自己髄核を採取し、機械的圧縮なしでL5 背髄神経節(DRG)に適用したもの。 偽手術群では、髄核を収穫したが、背中の手術領域から同様の量の筋肉を採取して代わりにDRGに適用。

背髄神経節(DRG)への髄核(NP)の適用は、主に後角ニューロン、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトにおいて、脊髄におけるIL-33とST2発現の増加を誘導した。脊髄に送達されたLV-shIL-33はIL-33の発現をノックダウンし、顕著に機械的アロディニアを軽減した。さらに、LV-shIL-33の脊髄投与は、脊髄IL-1β、TNF-α、COX-2のC-Jun N末端キナーゼ(JNK)、細胞外シグナル調節キナーゼERK)、およびNF-κB/ p65の過剰発現を減少させた。尚、p38は減少しなっかった。

著者らは、脊髄IL-33発現の阻害は、椎間板ヘルニアによって引き起こされる根性痛を治療するための潜在的治療法になり得ると述べている。

ヘルニア化した椎間板によって誘発される根性痛は、一般的な成人人口の2.2%におよぶと推定されている。根性痛のメカニズムは、ヘルニア髄核(NP)による神経根への機械的圧迫が原因であると考えられてきた。しかし、末梢および中枢神経系で起こる免疫および炎症反応が、根性痛の進行においても重要な役割を果たすという考えを裏付ける証拠が増えている(1.2.)。

神経根の炎症が、単独ないしは機械的な圧迫との組み合わせによって神経根の痛みに寄与する。同時に、神経根症の症状はその非存在下でも起こりうる。

IL-33は、サイトカインのIL-1ファミリーの新規メンバーであり、ST2およびIL-1レセプターからなるその受容体複合体による免疫応答および炎症応答の調節に関与することが示されている(3.)。 IL-33の発現は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、細胞外調節キナーゼ(ERK)、p38MAPK、c-Jun N末端キナーゼ(JNK))および核因子-κB(NF -κB)などによって媒介される。

IL-33 / ST2シグナル伝達は、実験的自己免疫性脳脊髄炎、アルツハイマー病およびクモ膜下出血を含む、多くの炎症性および自己免疫疾患の発症および伸展において重要な役割を果たす。

また、IL-33 / ST2シグナル伝達が末梢および中枢神経系における炎症性疼痛の調節に関与していることが報告されている(4.5.)。さらに、脊髄神経結紮または坐骨神経の慢性狭窄傷害後の神経因性疼痛の調節において、脊髄IL-33 / ST2シグナル伝達が重要な役割を果たすことも示されている(6.7.)。

出典文献
IL-33/ST2 signaling contributes to radicular pain by modulating MAPK and NF-κB activation and inflammatory mediator expression in the spinal cord in rat models of noncompressive lumber disk herniation
Si-Jian Huang, Jian-Qin Yan, Hui Luo, Lu-Yao Zhou, Jian-Gang Luo
Journal of Neuroinflammation201815:12
https://doi.org/10.1186/s12974-017-1021-4

1.
Miao GS, Liu ZH, Wei SX, Luo JG, Fu ZJ, Sun T. Lipoxin A4 attenuates radicular pain possibly by inhibiting spinal ERK, JNK and NF-kappaB/p65 and cytokine signals, but not p38, in a rat model of non-compressive lumbar disc herniation. Neuroscience. 2015;300:10–8.View ArticlePubMedGoogle Scholar

2.
Liu ZH, Miao GS, Wang JN, Yang CX, Fu ZJ, Sun T. Resolvin D1 inhibits mechanical hypersensitivity in sciatica by modulating the expression of nuclear factor-kappaB, phospho-extracellular signal-regulated kinase, and pro- and antiinflammatory cytokines in the spinal cord and dorsal root ganglion. Anesthesiology. 2016;124:934–44.

3.
Verri WA Jr, Souto FO, Vieira SM, Almeida SC, Fukada SY, Xu D, Alves-Filho JC, Cunha TM, Guerrero AT, Mattos-Guimaraes RB, et al. IL-33 induces neutrophil migration in rheumatoid arthritis and is a target of anti-TNF therapy. Ann Rheum Dis. 2010;69:1697–703.

4.
Zarpelon AC, Cunha TM, Alves-Filho JC, Pinto LG, Ferreira SH, McInnes IB, Xu D, Liew FY, Cunha FQ, Verri WA Jr. IL-33/ST2 signalling contributes to carrageenin-induced innate inflammation and inflammatory pain: role of cytokines, endothelin-1 and prostaglandin E2. Br J Pharmacol. 2013;169:90–101.

5.
Verri WA Jr, Guerrero AT, Fukada SY, Valerio DA, Cunha TM, Xu D, Ferreira SH, Liew FY, Cunha FQ. IL-33 mediates antigen-induced cutaneous and articular hypernociception in mice. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008;105:2723–8.

6.
Liu S, Mi WL, Li Q, Zhang MT, Han P, Hu S, Mao-Ying QL, Wang YQ. Spinal IL-33/ST2 signaling contributes to neuropathic pain via neuronal CaMKII-CREB and astroglial JAK2-STAT3 cascades in mice. Anesthesiology. 2015;123:1154–69.View ArticlePubMedGoogle Scholar

7.
Zarpelon AC, Rodrigues FC, Lopes AH, Souza GR, Carvalho TT, Pinto LG, Xu D, Ferreira SH, Alves-Filho JC, McInnes IB, et al. Spinal cord oligodendrocyte-derived alarmin IL-33 mediates neuropathic pain. FASEB J. 2016;30:54–65.

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。