本態性振戦は小脳系の機能不全にリンクされる進行性神経疾患 [医学一般の話題]

本態性振戦は身体の一部の震えを抑えられなくなる神経障害で、本態性と言われるように、脳機能の異常などの原因となる病態が見つかっておらず、生命に関わる疾患ではなく健康上の問題はないと認識されている。

しかしながら、コロンビア大学のElan D. Louisは、小脳皮質に構造変化を認め、病因の中心はプルキンエ細胞にあると報告している(1)。

これより以前にも、本態性振戦とtandem gaitが相関しており、さらに、認知機能も相関していることから、認知と運動回路に関与する広汎性障害であると報告されている(2)。

tandem gaitは、振り出した足の踵を軸足のつま先につけることを繰り返しつつ歩かせる歩行テストで、小脳機能に異常があれば、うまく足がそろわずによろけるか、転倒する。

そもそも、歩行動作は認識および運動神経系の両方が同時に要求される。最近は、高齢者における認知機能と運動機能、および神経疾患との様々な相互作用を調査した文献が増えており(3.)、認知障害によって転倒発生率が80%増加するなど、転倒の独立した予測因子であると報告されている(4)。

本態性振戦は一般的な疾患で、アメリカにおける患者数は約1千万人と言われている。振戦の程度は、非常に軽微なものから日常生活に支障を来すほどの重度なものまである。さらに、上記研究報告が示すように、原因が小脳にある進行性疾患であり、認知機能とも関連するなど決して侮れない疾患と言える。

引用文献

1.
From Neurons to Neuron Neighborhoods: the Rewiring of the Cerebellar Cortex in Essential Tremor
Elan D. Louis
Cerebellum. 2014 Aug; 13(4): 501–512.
doi: 10.1007/s12311-013-0545-0 PMCID: PMC4077904

2
Tandem gait performance in essential tremor patients correlates with cognitive function
Elan D LouisEmail author and Ashwini K Rao
Cerebellum & Ataxias20151:19
https://doi.org/10.1186/s40673-014-0019-2

3.
Rao AK, Uddin J, Gillman A, Louis ED. Cognitive motor interference during dual-task gait in essential tremor. Gait Posture. 2013;38:403–409. doi: 10.1016/j.gaitpost.2013.01.006. [PMC free article] [PubMed]

4.
Tinetti ME, Speechley M, Ginter SF. Risk factors for falls among elderly persons living in the community. N Engl J Med. 1988;319:1701–1707. doi: 10.1056/NEJM198812293192604. [PubMed]

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