クランベリーは高齢女性の抗菌剤使用率・多剤耐性グラム陰性桿菌・入院を減少させる [医学・医療への疑問]

特別養護老人ホームに居住する女性を対象にした、二重盲検無作為化プラシーボ対照試験の結果、膿尿・細菌尿への効果に有意差無しとする結論が報告されている。しかし、抗菌剤投与日数・使用率、入院日数、および多剤耐性グラム陰性桿菌のエピソードは大きく減少しており、その効果は十分に意義があるものと考えられる。

しかし、この結果については結論では述べられておらず(要約中では)、極めて恣意的な結論に感じられる。

参加者は、英語を話す65 歳以上の女性185名。

介入群(治療群)の92名には、有効成分のプロアントシアニジン 36 mg を含む経口クランベリー 剤2カプセル(ie, 72 mg total, equivalent to 20 ounces of cranberry juice)を投与。対照群は93 名。

主要評価項目は、細菌尿の存在(ie, at least 105 colony-forming units [CFUs] per milliliter of 1 or 2 microorganisms in urine culture)と、膿尿(ie, any number of white blood cells on urinalysis)。2 ヵ月ごとに評価して、1 年間監視。

二次的評価は、症候性尿路感染症 (UTI)、全死亡、全入院、すべて多剤耐性生物、尿路感染症の疑いによる抗菌剤投与入院と、全ての抗菌剤投与を目的とする入院。

膿尿、細菌尿の存在は、未調整の結果では、治療群 25.5% (95% CI 18.6%- 33.9%) 、対照群 29.5% (95 %ci、22.2% -37.9%) 。調整後では、29.1% 対 29.0%(OR, 1.01; 95% CI, 0.61-1.66; P =0 .98)で、差は無し。

症候性 Utiのエピソードは、治療群10、対照群12。

死亡は17対16名(20.4 vs 19.1 deaths/100 person-years; rate ratio [RR], 1.07; 95% CI, 0.54-2.12)。
と、ここまでは差は無し。

しかし。

入院は33 対50 (39.7 vs 59.6 hospitalizations/100 person-years; RR, 0.67; 95% CI, 0.32-1.40)で、入院/100 人年では治療群が33%減少。

多剤耐性グラム陰性桿菌は9 対 24episodes/100 person-years(RR, 0.38; 95% CI, 0.10-1.46)と、62%減少。

細菌尿・膿尿は特別養護老人ホームに入所中の高齢女性に多く発生する。予防法の1つとしてクランベリー カプセルが投与される(この研究では、代替医療としての位置付け)。

この研究は、経口クランベリー カプセルによる細菌尿・膿尿、UTIおよび死亡数への効果を調査したものであり、この結果に有意差が無かったことは事実。しかし、多剤耐性グラム陰性桿菌感染が62%減少したことは画期的であり、さらに、抗菌剤の投与や入院日数が減少していることは大きな成果と言えるはず。

このような興味深い結果も出ていることを無視せず、クランベリーの有用性を真摯に認めてさらなる研究が必要なことを述べるべき(要約を読んでいるので、全文に記述が有るかは不明)。

いつもながら、医学論文の結論は恣意的なもの(この文献は、世界4大医学雑誌の1つに報告されたもの)。

追伸
注意すべき点は、クランベリーは、薬物が吸収される際に代謝する酵素の1つである、CYP2C9の活性を阻害するため、CYP2C9によって代謝される薬の血中濃度を高めてしまい、薬効を増強する可能性がある(代謝される量を計算して、成分量は調整されている)。主な薬品は、イブプロフェン、ワルファリン、ロサルタン、アミトリプチリンなど。

出典文献
Manisha Juthani-Mehta, Peter H., Luann Bianco, et al.
Effect of Cranberry Capsules on Bacteriuria Plus Pyuria Among Older Women in Nursing Homes
: A Randomized Clinical Trial.
JAMA. 2016;316(18):1879-1887. doi:10.1001/jama.2016.16141.

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