皮膚炎症は神経精神疾患発症に関連する  [免疫・炎症]

皮膚末梢免疫刺激は脳内の白血球浸潤に関連し、中でも、ケモカインがこの応答を駆動する重要なメディエーターであることが示唆されています。この研究によって、抹消組織固有の炎症は脳の転写プロファイルを変化させることが実証されました。

うつ病、不安や統合失調症などの精神神経障害は慢性の炎症性疾患に関連することが知られていましたが、そのメカニズムは良く解っていませんでした。

脳におよぼす組織特異的末梢性炎症の影響を調査するために、乾癬様炎症モデルマウスに対し、Imiquimod;イミキモド(1.アルダラモデル, 2.局所的適用IMQモデル, 3.可溶性IMQインジェクションモデル, 4.TPAモデル)を使用して実験。

特に、局所アルダラ処置によって脳内に強力持続的にケモカインを誘導しました。 3日目に、アルダラ処理では、マウスの脳において7つの遺伝子全てが有意に増加しました。驚くべきことに、CCL3、CCL5、およびCXCL10の発現は約1000倍に増加しました。 CCL3とCXCL10を除く全ての遺伝子の発現は対照の900倍であり、5日目にも上昇したままでした。

皮膚アルダラ治療は神経発生の有意な減少と活動(穴を掘る)の抑制を引き起こしました。また、海馬の歯状回にダブルコルチン(DCX)陽性ニューロンの数の減少を引き起こし、を海馬認知機能障害、学習障害や抑うつ様症状に関連ました。

ケモカインの最も特徴的な役割は白血球遊走を調整することです。したがって、局所アルダラ治療後の脳におけるケモカインの転写アップレギュレーションは、周囲からの白血球の流入と関連していたかどうかですが、実験結果から、浸潤白血球よりも脳常駐細胞によって産生される可能性が示唆されています。

このモデルでは、神経発生の減少および活性の抑制、およびT細胞、NK細胞、骨髄細胞を含む、脳実質への免疫細胞サブセットの浸潤を誘導しました。

この研究によって、脳から離れた部位である、皮膚に発生した炎症が脳機能に影響を与える可能性を示唆しており、皮膚への薬剤治療が思いもよらぬ影響を与えることも判明しました。この知見は、鍼灸治療にとっても興味深い内容です。今後は、神経精神疾患治療のためのより良い治療戦略が可能となることが期待されます。

原文は長大ですので、簡単にまとめています。私の知識と英語力では、間違いも多々有ろうかと思われます。実験内容の詳細は原著を読んで確認してください。また、間違いが有ればご教授ください。

補足:
Imiquimodは樹状細胞やマクロファージなどに発現しているToll-like receptor 7に直接結合し、タイプ1インターフェロンを誘導して自然免疫を活性化します。欧米では「アルダラRクリーム」として販売されています。尖圭コンジローマに対して保険適応となっていますが、我が国では未だ未認可であり個人輸入で購入します。基底細胞癌、日光角化症、ボーエン病など表在性の皮膚悪性腫瘍などで有効性が認められつつあるようです。

出典文献
Alison McColl, Carolyn A. Thomson, et al.,
TLR7-mediated skin inflammation remotely triggers chemokine expression and leukocyte accumulation in the brain.
Journal of Neuroinflammation201613:102 DOI: 10.1186/s12974-016-0562-2
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