血管造影においてCO2使用が腎症発症リスクを低減すると報告 [医学一般の話題]

血管造影の主な造影剤にCO2(二酸化炭素)を使用すると、造影剤誘発腎症 (CIN)の発症を低減できる可能性があると報告されています。

プライマリアウトカムは、血管造影後72 時間以内にCINの定義である、血清クレアチニン25% または 0.5 mg/dL (44μmol/L) の増加。

CO2群で使用されるヨード造影の総体積は、対照群に比べ90%近く減少(17.8±16.1ml vs. 115.9±57.8ml; p<0.001)しました。

CINの発症率は、CO2群対マッチングしたヨード造影のみの群で、14% (n=7/50)vs. 29% (n=29/100)(p=0.045)でした。

ヨード剤25ml以上の使用で、CIN発症リスクのオッズ比は6.9 (95% confidence interval 1.6-30.6 )と、約7倍高くなりました。また、CINの予測において感度は94.4%。

但し、CO2の投与には、一時的な下肢の痛みや知覚障害、また、横隔膜直上気管動脈内への投与の安全性の問題があります。

出典文献
Thulasidasan N, et al.
Use of carbon dioxide as a contrast medium during peripheral endovascular procedures significantly reduces the risk of contrast-induced nephropathy.
Society of Interventional Radiology, Mon, 4/4/2016: 4:21 PM - 4:30 PM

補足
造影剤に起因する腎障害は、通常1週間程度で回復する可逆的な機能障害ですが、時として重篤な腎不全に至る場合もあります。現在、明確な判定基準はありませんが、欧州泌尿器生殖器系放射線学会では、造影剤曝露から3 日以内にSCr値が0.5mg/dL以上または25%以上増加する場合に造影剤腎症と定義しているようです。SCr増加率が25%を超えますと死亡率が飛躍的に増加するため、cut off値として有用のようです。

造影剤腎症の発症率は3.7~70%と報告によって大きく異なっています。この要因として、患者背景、造影剤の種類、および造影剤腎症の定義が一定しない、などが挙げられます。発症のリスクファクターとして特に大きく影響するのは、造影検査直前のSCr値で、正常範囲内であれば腎症発症率は 1~2%ですが、1.5~2.0 mg/dL以上では20~30%と急激に高くなります。この他のリスクファクターとしては、造影剤投与量( > 150mL)、糖尿病、年齢(≧70歳)、NSAIDsや抗菌薬などの使用、脱水などが挙げられます。

重曹を輸液した場合に、腎症発症が有意に少なかったとする報告もあります。以前は、腎症予防として輸液に利尿薬を加えることが推奨されていましたが、フロセミドは造影剤腎症を有意に悪化させることが報告されたため、現在では造影剤腎症の予防にマンニトールやフロセミドは投与しません。

造影剤腎症の発症機序については、造影剤によって腎血管が収縮することで、腎血流量や糸球体濾過量が低下することや、造影剤が尿細管細胞に対して直接的に細胞毒性を有することも解っていますが、明確な原因は未解明のままです。

何れにせよ、検査のためとは言え血管内に外から強引に異物を入れるのですから、体に良いことは無いでしょう。血管造影を受ける人は、事前に、ご自分の体調とCIN発症リスクについて、十分に納得できる説明を受けることが肝要です。
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