冠動脈疾患へのエベロリムス溶出生体吸収性血管足場の効果 [医学一般の話題]

閉塞性冠動脈疾患患者に対する、エベロリムス溶出生体吸収性血管足場とエベロリムス溶出コバルトクロムステントとを比較した臨床試験の結果、効果は同等であったと報告されています。

冠動脈疾患に対する金属薬剤溶出冠動脈ステントによる有害事象は、冠状動脈血管壁内の金属ステントフレームの持続的な存在に関連します。エベロリムス溶出生体吸収性血管足場は長期的な改善を目的として開発されました。

安定または不安定狭心症の患者2008名を、無作為に2群に割り付けて実施した大規模多施設、無作為化臨床試験。エベロリムス溶出生体吸収性血管(Absorb)足場(n=1322)、エベロリムス溶出コバルトクロム(Xience)ステント(n=686)の 2:1の比率に割付。

主要エンドポイントは、1年間における両群の非劣性(マージンリスク差4.5%ポイント)、および標的病変(心臓死、標的血管の心筋梗塞、または虚血に対する血行再建)。

結果、標的病変は Absorb群で7.8%、 Xience群では6.1% 。その差は1.7 percentage points(95% confidence interval, -0.5 to 3.9; P=0.007 for noninferiority and P=0.16 for superiority)で、有意差は無し。

心疾患死では、Absorb群0.6% 、Xience群 0.1%(P=0.29)で、有意差は無し。血栓症も、それぞれ、1.5% と0.7%(P=0.13)で有意差無し。

出典文献
Stephen G. Ellis, Dean J. Kereiakes, Christopher Metzger, et al.,
Everolimus-Eluting Bioresorbable Scaffolds for Coronary Artery Disease
N Engl J Med 2015; 373:1905-1915November 12, 2015DOI: 10.1056/NEJMoa1509038

ステント治療による再狭窄率は20%から40%と高く、これを改善する目的で始められたのが薬物溶出性ステント(Drug Eluting StentB ; DES)です。ステント後の再狭窄の最大の原因は血管平滑筋細胞の増殖であるため、冠動脈ステントを構成するステンレスの金網の表面に再狭窄を予防する効果のある薬剤をコーティングしたものです。DESによって、再狭窄率は5~15%程度に低減すると言われています。インターネットで検索しますと、大学病院などのホムページでこの処置が紹介され推奨されています。

しかし、長期的には遅発性血栓症が問題となるなど、従来の金属製ステントに比べてベネフィットは無いとも言われています。薬物溶出ステントは、新生内膜や血管平滑筋細胞の増殖を抑制する薬剤を冠動脈内に溶出させます。しかしそれは、必然的に内皮細胞の再生遅延をもたらし、血栓形成を引き起こすことが本質的な問題点です。

薬害オンブズパースンは、2007年8月9日に厚生労働省とジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社ならびにボストン・サイエンティフィック・ジャパン株式会社に対し、「薬物溶出ステントの一時臨床使用の停止を求める要望書」を提出しています。

薬害オンブズパースン会議・タイアップグループ
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一方、生体吸収性血管足場は、心血管インターベンションにおける第四の革命として登場しました。この新技術は、一過性収縮改善や過度の新生内膜過形成に対抗する抗増殖薬を溶出しながら急性血管閉鎖と反動を防止するために、血管に一時的な足場を提供するものです。

生体吸収性血管足場に関する参考文献
Yosinobu Onuma, Patrick W. Serruys,
Bioresorbable Scaffold
The Advent of a New Era in Percutaneous Coronary and Peripheral Revascularization?
Circulation2011; 123: 779-797
doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.110.971606

生体吸収性血管足場のパイロットABSORBコホート研究では、光干渉断層計 (OCT)によって、2年後に足場が100%覆われた組織、および血管壁足場の完全な統合吸収と機能平滑筋細胞の浸潤が明らかになっています。

Serruys PW, Ormiston JA, Onuma Y, Regar E, Gonzalo N, Garcia-Garcia HM, et al.,
A bioabsorbable everolimus-eluting coronary stent system (ABSORB): 2-year outcomes and results from multiple imaging methods.
Lancet. 2009; 373: 897- 910. CrossRefMedlineGoogle Scholar
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