滲出性中耳炎への鼻バルーンの効果とは [医学一般の話題]

滲出性中耳炎に対する、鼻バルーン装置による自己通気と通常ケアのみを比較したオープンランダム化比較試験の結果、その差は僅かなものでした。

滲出性中耳炎の治療は、外科的治療法以外では科学的根拠に基づいた選択肢を欠いているため、この研究では選択肢の1つとして、自己耳管通気器具を用いた「鼻バルーン」の効果を評価しました。

320名の滲出性中耳炎の子供(4-11歳)を対象に、3回/1日の経鼻的バルーンによる膨張+通常ケアと、通常ケアの効果を比較。

ティンパノメトリーが正常になったのは、1月後47.3%、3月後49.6%とほぼ半数でした。

(介入群対対照群:47.3% [62/131] vs. 35.6% [47/132]; adjusted relative risk [RR] 1.36, 95% confidence interval [CI] 0.99 to 1.88) and at 3 months (49.6% [62/125] vs. 38.3% [46/120]; adjusted RR 1.37, 95% CI 1.03 to 1.83, “number needed to treat = 9”通常ケアが無効な者1人を軽快させるのには、この方法を9人に実施する必要がある)

バルーン処置はOMQ-14によるアンケート評価では、ベースラインと比較して3ヶ月間のQOLの差は、0.42ポイント(95% CI -0.63 to -0.22)でした。

試験中に報告された呼吸器感染症は、対照群の10%に対してバルーンでは15%で、8名の患者が耳の痛みを訴え、5名が耳の急性感染症を発症しました。

本症に対し、抗生物質、鼻腔内ステロイド、および抗ヒスタミン剤は効果が無いと言われています。

著者らは、子供と親のQOLを向上させると述べていますが、どうでしょうか。

出典文献
Ian Williamson, Jane Vennik, Anthony Harnden, Merryn Voysey, Rafael Perera, Sadie Kelly, et al.
Effect of nasal balloon autoinflation in children with otitis media with effusion in primary care: an open randomized controlled trial
CMAJ July 27, 2015 First published July 27, 2015, doi: 10.1503/cmaj.141608 Original Articles

鼻バルーンとは、耳管を広げて中耳腔に溜まった浸出液の排出を促す方法です。ネット上でも、オトヴェント (自己耳管通気器具)が販売されています。鼻に挿入したバルーンを膨らませることで、耳管を開いて中耳内圧と外気圧とを等しくする自己耳管通気器具です。

最近では、ダイビングの耳抜き不良予防の練習用として、飛行機搭乗中の耳痛(航空性中耳炎)の予防、および高気圧酸素療法中の耳痛の予防などにも使用されており、子供から大人まで幅広い年代層で使用されています。

しかし、疑問です。耳管は開くものでしょうか。そもそも、耳管の半分は軟骨で残り半分は骨性ですから、バルーンなどで開くとは思えません。

手術的には、鼓膜に細い注射針を刺して抜き取る方法(鼓室穿刺)や、鼓膜にチューブを挿入する方法(鼓室内チューブ留置術)があります。鼻やのどの炎症が潜在する場合がほとんどですから、鼻やのどの治療も必要です。小児の場合、アデノイド肥大が関与することが多いため、チューブ挿入と同時にアデノイド切除も必要となります。小児の滲出性中耳炎は、10歳前後で自然に治癒する場合が多いのですが、再発を繰り返す場合も少なからず認められます。

滲出性中耳炎を放置すると、鼓膜と耳小骨が癒着した癒着性中耳炎、コレステリン肉腫症や、慢性中耳炎の1つである真珠腫性中耳炎を発症する可能性があります。

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