クルクミンの投与は低酸素誘導脳浮腫を予防する [栄養の話題]

低酸素誘導脳浮腫(HACE)に対する、クルクミンの予防的効果を調べた研究で、低比重低酸素状態に曝露したラットの脳浮腫や炎症が消失して強力に改善したと報告されています。

ラットを、7620メートル25±1℃の低比重低酸素状態で24時間曝露する1時間前にクルクミン(100 mg / 体重kg)を投与してその効果を検証。

クルクミンの前投与によって、低酸素下における脳水分含量は(3.53±0.58湿潤-乾燥重量(W/D)比)コントロール(7.1±1.0 W/D ratio)に比べ有意に減少(p<0.001)。

経血管漏出についても、クルクミン投与は(136.2±13.24 relative fluorescence units per gram (r.f.u./g)コントロール(262.42±24.67 r.f.u./g)に比べ有意に減少。

さらに、クルクミンの投与によって、NF-κBの増加を抑制し(p<0.001) 、IL-1、IL-2、IL-18、TNF-α、および細胞接着分子(P-selectin and E-selectin)を減少させ、抗炎症性サイトカインであるIL-10を増加させました。

クルクミンは低酸素下において、Na+/K+-ATPaseとENaC レベルの発現上昇(p<0.001)に沿って血管内皮増殖因子 (hypoxia-inducible factor:VEGF)レベルを維持し、脳の低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF) HIF-1 α レベルを安定化させました。

クルクミンは低酸素下において、脳ZO-1、 JAMC、 claudin 4、claudin 5 レベル(p<0.001)を回復させ、病理組織学的観察でも脳浮腫や炎症がないことが確認されました。

一般的にも良く知られているように、クルクミンはウコン(英名ターメリック)に含まれる代表的な成分であり、ポリフェノールの仲間です。クルクミンは植物自身の防御成分であり、カレーやたくあんの黄色の元となる色素です。最も消費量の多い食品の1であるとともに、サプリとしても多く出回っています。しかし、ウコンには牛肉に匹敵する鉄が含まれるため、慢性C型肝炎などで肝臓に炎症がある人では過剰な摂取によって炎症が悪化することや、急性肝障害を引き起こす原因としても最も多い食品であることに注意が必要です。

出典文献
SKS Sarada, M Titto, P Himadri, S Saumya, V Vijayalakshmi,
Curcumin prophylaxis mitigates the incidence of hypobaric hypoxia-induced altered ion channels expression and impaired tight junction proteins integrity in rat brain.
Journal of Neuroinflammation 2015, 12:113 doi:10.1186/s12974-015-0326-4
http://www.jneuroinflammation.com/content/12/1/113

補足
低酸素誘導性因子(hypoxia-inducible factor:HIF)の活性化は、様々な遺伝子の発現を誘導し、細胞を環境に対して適応させます。最近は、HIF が幹細胞の維持や炎症の制御、さらに虚血性疾患や癌の転移、治療抵抗性などにも関与していることが明らかになっています。

脳ZO-1・ JAMC・claudin
生体バリアを構成する血液脳関門の本体は、毛細血管内皮細胞間のタイト結合によるシールです。タイト結合は、体表を覆う上皮細胞や血管内腔を覆う内皮細胞の、細胞間の最も外側に存在する細胞間接着装置です。このタイト結合を構成するタンパクとして、クローディン(claudin)、(occuludin)、JAM(junctional adhesion moleccule)、ZO(zonulaocculudens)-1があります。

脳血液関門の機能的破綻は、脳浮腫、アルツハイマー病、多発性硬化症など、多くの中枢神経疾患の発症や悪化に関与しています。また、以前は、単に物質の通過を阻害する防御機能のみが認識されていましたが、最近では、選択的に物質を透過させることができるチャネルとして、細胞内への様々なシグナル伝達に関与していると考えられています。

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