最高齢者では炎症性サイトカインは認知症リスクを低減する [医学一般の話題]

 最も高齢のグループにおいて、インターロイキン6(IL-6)受容体レベルが高い者は認知症のリスクが有意に低かったと報告されています。この調査結果は、認知症発症の根本的なメカニズムが、高齢者の中でも比較的若い年齢層とより高齢層では異なる可能性を示唆しています。

 炎症マーカーと認知症のリスクとの関係は、年齢によって変更される可能性があります。

 以前の研究では、炎症マーカーと60代後半と70年代初頭の人々に新たに発症した認知障害のリスクとの間には強い正の相関が示されたと言われています。多くの研究が、サイトカイン放出および免疫細胞の活性化など、神経変性は炎症性のプロセスであることを示しています。しかし、これらのプロセスの詳細は複雑で、まだよく理解されてはいません。

 この研究では、骨粗鬆症による骨折の20年間の研究データ10,000人の約10%を収集。炎症マーカーである、IL-6を含むサイトカインの可溶性受容体(IL-6 SR)、腫瘍壊死因子可溶性受容体1(TNF SR1)の血清レベルを調査。

 調査開始時点の参加者の年齢は平均78歳(SD 2.8)で、10年後と20年後に血液分析および認知機能を評価。380名の参加者は16年後も血清炎症マーカーを分析。

 16年後の調査で、IL-6 SRの高レベルの者は低レベルのものに比べ、認知症のリスクのオッズ比は0.47(95% CI 0.25 to 0.87)と、半減しています。

 20年後では、調整後0.30 (all P<0.05)と、劇的に減少しました。

 また、他の炎症マーカーのレベルは、認知症のリスクに関連付けられてはいません。

 IL-6は炎症性のサイトカインですが、一方では、神経障害時のミクログリアやアストロサイトの活性化因子でもあり、神経保護作用があります。IL-6遺伝子の過剰発現は神経損傷モデルの治癒を早めることが示されています。この様に、炎症性サイトカインの役割は単純ではなく、状況や病期によっても変化します。なお、参加者は比較的少数であり、潜在的な交絡因子に基づいていることにも注意が必要です。

Metti A, et al.
Change in inflammatory markers and cognitive status in oldest-old women
AAIC 2012; Abstract O5-02-01.

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