創傷によるミトコンドリアDAMPの放出は炎症応答を引き起こす [医学一般の話題]

 創傷によって、敗血症に似た全身性炎症反応症候群(SIRS)を引き起こすことがあります。微生物の病原体関連分子パターン(PAMP)は、パターン認識受容体を介して自然免疫細胞を活性化します。ところが、自身の細胞損傷によっても、自然免疫を活性化する内在性の「ダメージ」関連分子パターン(DAMP)が放出されることがある様です。

 ミトコンドリアのルーツは細菌に由来する内部共生体であるため、細菌の分子モチーフをもっている可能性があります。従って、ミトコンドリアのDAMP(MTD)が創傷によって循環血中に放出されると、重大な影響を免疫に与える可能性があります。

 MTDはホルミルペプチドとミトコンドリアDNAを含んでおり、これらはそれぞれホルミルペプチド受容体-1およびToll様受容体(TLR)9を介して、ヒト多形核好中球(PMN)を活性化します。MTDはPMNでのCa2+ 流入とマイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼのリン酸化を促進します。これによって、PMNの遊走と脱顆粒がin vitroおよびin vivoで誘導されます。

 循環血中のMTDは、好中球を介して臓器損傷を引き起こすことがあります。創傷による細胞破壊は、細菌のPAMPと、進化的に保存された類似性をもつミトコンドリアDAMPを血中に放出します。この様な、敗血症で活性化されるのと同一の自然免疫経路を介したシグナルは、敗血症に似た状態を作り出します。

 細胞損傷による、この様なミトコンドリア由来の「内なる敵」の放出は、外傷、炎症、そしてSIRSをつなぐ重要な関係として注目されます。

Qin Zhang1, Mustafa Raoof1 et al., Circulating mitochondrial DAMPs cause inflammatory responses to injury Nature , 464, 104-107 (4 March 2010) doi:10.1038/nature08780 Letter


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