絡脈の構造 (手の少陰の絡脈) [経絡とは]

 絡脈の流注は全体に記述が少なく、この心経の絡脈の上肢部分の走行も数通りの解釈が可能でした。昔の原稿を改めて検討し、本経である“心経”の上肢部分を訂正し、この絡脈の流注としました。その結果、“手の少陰の絡脈”の上肢部分も訂正し、本経と同様に動脈としました。 

流注
 「…(1)名ハ曰ク通里.腕ヲ去ルコト一寸半.別レテ上ル.(2)経ヲ循リテ心中ニ入ル.(3)舌本ニ繋ビ.目系ニ属ス.…(4)別ハ太陽ニ走ル…」
流注解釈
 (1)尺骨動脈より背側手根枝に分岐し(ほぼ通里穴の位置)て始まり、背側手根動脈網を迂回して、後骨間動脈へと入り中枢へと向かう。(2)肘の手前で一旦尺骨動脈へ合流し、直ぐに、尺骨半回動脈へと入り、さらに上側側副動脈を上行して、再び上腕動脈へと入り心経に合流して心臓へと入る。(3)心臓より上大静脈へ出て、内頚静脈より前頚静脈を上行し、舌下静脈への吻合から舌へと結びつく。また、顔面静脈から上眼静脈にて目に属す。(4)別脈は、背側手根枝より第5指尺側の背側指動脈へと向かい、手の太陽小腸経へと走行する。

 以前の原稿ですと、動脈から静脈への交代部位に問題がありましたが、何も説明していませんでした。
 通里穴が絡脈の起点である以上、この部分で動脈と静脈を結ぶバイパスはあり得ませんので不可能です。今回の変更で、心経とその絡脈ともに動脈となり、全体の整合性が高められました。 
 以前は、上腕部分の経絡の走行位置の前後関係について、内経の記述に拘り過ぎていた様です。深部の主幹的な静脈は、ほとんどの系統解剖学書では省略して1本のみが描かれています。しかしながら、実際は同名の動脈を取り囲む様に2本~数本が走行し、さらに、所々でバイパスによって連絡しています。従いまして、この領域の動脈と静脈についての、各経絡の前後関係の記述にはあまり意味は無いと思われます。
 記述の無い部分を補足してスムーズに走行させ、尚かつ、他経の記述との整合性を求めると、完璧とまではいきませんが、正経脈である心経は、その存在感から見てやはり主幹的動脈が相応しいものと考えられます。

手の少陰の絡脈図
img027.gif

追伸
本記事は、拙著「中医学の誤謬と詭弁:2015年1月出版」にも記されています。本書は、黄帝内経における臓腑経絡概念の本質を解読・検証したものです。市販はしておりませんが、希望される方には、個人的に販売しています。申し込み方法は、カテゴリー「出版のお知らせ」をご覧ください。


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