VD の補給が心血管イベントの発生率を減らす可能性があると言いますが [医学・医療への疑問]

高齢者に対し、毎月バイタミンD(VD)サプリメントを摂取させて主要な心血管イベントの発生率の変化を調査した研究の結果、VD の補給は発生率を減らす可能性があると記されている。しかし、、。

研究デザインは、ランダム化二重盲検プラシーボ対照試験 (D-Health 試験)。

参加者は、登録時の年齢が 60 ~ 84 歳の21, 315 人。 除外基準は、自己申告による高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、腎臓結石、骨軟化症、サルコイドーシス、1日あたり500 IUを超えるVDサプリメントの摂取、および言語または認知障害のために同意が得られない者。

介入 60, 000 IU/月のVD3 (n = 10, 662) またはプラシ-ボ(n = 10, 653) を最長 5 年間経口摂取。 16, 882 人の参加者が介入期間を完了(プラシ-ボ 8,270 (77.6%)。VD 8,552 (80.2%)。

メインアウトカムは、心筋梗塞、脳卒中、冠状動脈血行再建術などの主要な心血管イベントの発生。

最終的に21, 302 人が分析に含まれ、介入期間の中央値は5年。 1,336 人の参加者が重大な心血管イベントを経験)。

主要な心血管イベントの発生率は、プラシ-ボ 699 人 (6.6%)、VD 637 人 (6.0%)de,プラシーボ群よりもVD群の方が低かった (hazard ratio 0.91, 95% confidence interval 0.81 to 1.01).特に,ベースラインで心血管薬を服用していた患者の間で顕著だった(0.84, 0.74 to 0.97; P for interaction=0.12).。但し、P 値により有意性はみとめられなかった。

全体として、5年時点での標準化された原因別累積発生率の差は、参加者1000人あたり-5.8イベント(95% confidence interval −12.2 to 0.5 per 1000 participants)であり、その結果、重大な心血管イベントを1件回避するために治療が必要な件数は172件(number needed to treat)となった。

心筋梗塞の発生率(hazard ratio 0.81, 95% confidence interval 0.67 to 0.98)と、冠動脈血行再建術(0.89, 0.78 to 1.01)(0.89、0.78~1.01)はVD群の方が低かったが、脳卒中の発生率(0.99、0.80)には差がなかった (0.99, 0.80 to 1.23)。

結論では、{絶対リスクの差は小さいが、VD の補給は主要な心血管イベントの発生率を減らす可能性があり、心血管疾患の予防または治療のために薬を服用している人々におけるVD補給の役割についてさらなる評価を促す可能性がある。」と記されている。

しかし、その差は僅かであり、臨床的に意味を持つとは考えにくい。さらに、NTTが172とは、1件のイベントを回避するために必要な治療件数は172件であり、1人を救うために171人への治療が無駄となる。NTTは一桁が望ましい。

医師達は余程VDが好きらしく、様々な疾患に対して何の根拠もなくVDを投与する似たような研究が後を絶たない。

出典文献
Vitamin D supplementation and major cardiovascular events: D-Health randomised controlled trial
BMJ 2023; 381 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2023-075230 (Published 28 June 2023)
Cite this as: BMJ 2023;381:e075230