症候性動脈閉塞患者における頭蓋外-頭蓋内バイパス手術の追加は転帰を改善しない [医学一般の話題]

内頚動脈(ICA)または中大脳動脈(MCA)のアテローム性動脈硬化性閉塞を有する患者において、薬物療法に頭蓋外-頭蓋内(EC-IC)バイパス手術を追加しても、30日以内の脳卒中または死亡、および2年間の同側虚血性脳卒中という複合転帰のリスクは有意に変化しなかった。

これまでの試験では、内頚動脈(ICA)または中大脳動脈(MCA)のアテローム性動脈硬化性閉塞を有する患者の脳卒中予防に利点は示されていませんでしたが、その後、手術技術が改善したため、改めてEC-IC バイパス手術の効果を調査したようです。

研究は、中国の13施設で実施された無作為化、非盲検、結果評価者盲検試験。 2013年6月から2018年3月までに、一過性脳虚血発作を伴うICAまたはMCA閉塞、またはCTによる灌流画像診断に基づく血行力学的不全に起因する非障害性虚血性脳卒中を患う患者を募集。合計324人が適格者と確認され、(年齢中央値52.7歳、男性257人[79.3%])、309人(95.4%)が試験を完了した。

介入は、EC-IC バイパス手術と薬物療法 (n = 161) または薬物療法単独 グループ( n = 163)。 薬物療法には、抗血小板療法と脳卒中危険因子の管理が含まれた。

主要アウトカムは、無作為化後 30 日以内の脳卒中または死亡、および30 日を超えてから 2年間の同側虚血性脳卒中を組み合わせた。 副次転帰は9件で、2年以内の脳卒中または死亡、2年以内の致死的な脳卒中が含まれた。

外科手術群と薬物療法単独群と複合主要アウトカムは、それぞれ8.6% [13/151] vs 12.3% [19/155]で、 発生率の差は-3.6% [95% CI、-10.1% ~ 2.9%]; ハザード比 [HR]、0.71 [95% CI、0.33-1.54]でしたが、P = 0.39と有意差は認められなかった。

30日間の脳卒中または死亡リスクは外科手術群の6.2%(10/161)に対して、内科治療群1.8%(3/163)。

30日を超えて2年までの同側虚血性脳卒中のリスクは、それぞれ 2.0%(3/151) vs 10.3% (16/155)。

事前に指定された9つの二次エンドポイントのうち、2年以内の脳卒中または死亡は、それぞれ9.9% [15/152] vs 15.3% [24/157]、発生率の差は-5.4% [95% CI、- 12.5% ~ 1.7%]、HR;0.69 [95% CI、0.34-1.39]、P = 0 .30で、有意差は無し。

2 年以内の致死性脳卒中は2.0% [3/150] vs 0% [0/153]で、発生率の差は、1.9% (95% CI、-0.2% ~ 4.0% ; P = 0 .08)と、有意差無し。

結論として、症候性ICAまたはMCA閉塞および血行力学的不全を有する患者において、薬物療法にバイパス手術を追加しても、30日以内の脳卒中または死亡、および30日を超えて2年にわたる同側虚血性脳卒中のリスクは有意に改善しなかった。

しかし、私には「2 年以内の致死性脳卒中が外科グループで2.0% [3/150]であり、一方の薬物単独群では0% [0/153]であったことが気になる。150人中の3人に過ぎないとは言えない。有効性を評価する上で、「死亡」を他の有効性や悪化などと同様の尺度で点数化している研究を見かけるが、死亡は単なる症状の悪化などとは全く次元の違うことであり、点数化して評価できることではない。

出典文献
Extracranial-Intracranial Bypass and Risk of Stroke and Death in Patients With Symptomatic Artery Occlusion The CMOSS Randomized Clinical Trial
Yan Ma, Tao Wang, Haibo Wang, et al.
JAMA. 2023;330(8):704-714. doi:10.1001/jama.2023.13390