変形性股関節症に対する関節内コルチコステロイドおよび局所麻酔注射の有効性とは [医学・医療への疑問]

変形性股関節症に対する指導および最良の現行治療(BCT)と、コルチコステロイド(トリアムシノロン)および局所麻酔薬(リドカイン)の超音波誘導関節内注射を加えることによる有効性を比較した試験によって、「変形性股関節症に対し、トリアムシノロン-リドカインを併用した関節内注射はBCTに追加する治療選択肢である。」と述べられている。

しかし、、。

研究デザインは、単一盲検、平行群、3腕、ランダム化比較試験。参加者(平均年齢は62.8歳)は、変形性股関節症および少なくとも中等度の疼痛を有する40歳以上の成人199名。無作為に、67名が指導およびBCTを受け、66名がBCTにトリアムシノロンとリドカインの超音波誘導注射、66名がBCTにリドカインの超音波誘導注射を受けた。尚、参加者は、彼らが受けた注射についてマスクされた。

主な転帰は、6ヶ月後の、自己報告による股関節痛の強度(0-10数値評価尺度)。

BCTと比較してBCTと超音波-トリアムシノロン-リドカインを併用した場合、6か月間の股関節痛強度が改善し、平均差は-1.43(95%信頼区間-2.15から-0.72、P <0.001)、標準化平均差は-0.55(-0.82から-0.27)。

BCT+超音波-トリアムシノロン-リドカインとBCT+超音波-リドカイン(-0.52(-1.21-0.18))との間では、6ヶ月間にわたる股関節痛強度の差は報告されなかった。超音波確認された滑膜炎または滲出液の存在は、BCT+超音波 - トリアムシノロン - リドカイン(−1.70(−3.10〜−0.30))で有意な効果と関連。

有害事象として、生体人工大動脈弁を有するBCT+超音波 - トリアムシノロン - リドカイン群の1人の参加者が、介入の4ヶ月後に亜急性細菌性心内膜炎で死亡した。恐らく、試験治療に関連していると考えられた。

例え、P値が低く有意であったとしても、痛みの差は10点満点中の1.43に過ぎず、標準化平均差は-0.55である。この程度の差を以て、「関節内注射はBCTに追加する治療選択肢である。」と、結論づけるのであろうか。さらに、基礎疾患の影響はあるだろうが、死亡者の存在は重大だと言える。死亡は、点数
の差などで比べられる事ではない。

出典文献
Clinical effectiveness of one ultrasound guided intra-articular corticosteroid and local anaesthetic injection in addition to advice and education for hip osteoarthritis (HIT trial): single blind, parallel group, three arm, randomised controlled trial
Zoe Paskins, Kieran Bromley, Martyn Lewis, Gemma Hughes, et al.
BMJ 2022; 377 doi: https://doi.org/10.1136/bmj-2021-068446 (Published 06 April 2022)
Cite this as: BMJ 2022;377:e068446