再生可能エネルギーの欺瞞を検証すべき時 [らくがき]

再生可能エネルギーとは、「自然に再生し、絶えず資源が補充されて枯渇することがないエネルギー」、という意味らしい。一般的には、太陽光、風力、およびその他の自然現象を永続的に利用することができるエネルギー源を意味している。

具体的には、太陽光発電、太陽熱発電、バイオマスエネルギー、風力発電、海洋温度差発電、空気熱利用、水力発電、潮力発電、地熱発電など。

* 補助金の存在がウソを暴く : コスト=エネルギー消費

再生可能エネルギーを次世代の主力エネルギー源にすべきとする意見が多く聞かれる。しかし、それは本当に正しいのか。それが真実かウソかを判断するには詳細な資料の検討や小難しい計算は必要としない。これらの電源に対して、企業にいくらの補助金が供与されているかを見るだけで十分である。

国際エネルギー機関の見積もりでは、2017~2040年の24年間に約400兆円もの補助金(諸国民の税金)が使われるとのこと。太陽光と風力が理にかなったものであれば補助金など必要ない筈であるが、その実体は経営的に自立できないほどコストが大きいのである。

コスト=エネルギー消費である。この補助金だけで、これらの再生可能エネルギーが全くエコでないことは明らかである。

* 電気自動車の問題は大量のエネルギーを消費して作るバッテリーと発電にある

発電の問題は、電気自動車が環境に良いというウソとも関係する。電気自動車が高額なのは、主に、安価で高性能のバッテリーを製造できないことに原因がある。中国製の安価な電気自動車は国の多額の援助によって値下げが可能となったものである。

バッテリー製造には多くのエネルギーを消費する。さらに、廃棄のコストもエネルギー消費に入る。その製品がエコか否かは、使用中のコストのみではなく、製造から廃棄までのライフサイクル全般を合計して算出しなければならない。さらに、最大の問題は、電気自動車を走行させるための電気を発電しなければならないことである。

* 太陽光発電 : 効率性が最大の欠点

太陽光エネルギーは膨大であるが、密度が極めて低いため、利用するには途方もない面積が必要となる。変換効率を20%と高めに見積もっても、東京都で言えば23区の面積全てを発電施設にしなければならず、非現実的である。

さらに、発電だけでは無く、製造過程のエネルギー消費も勘定に入れなければならない。現在使用されている太陽電池のほとんどはシリコン(ケイ素)Siで作られている。ケイ素は地殻の28%を占めるため大量に存在するが、純粋なケイ素を取り出すには電気エネルギーを使って鉱石のSi-O結合を切って金属シリコンにしなければならない。電力料金の高い日本では採算が取れないため、北米、ブラジル、ノルウェー、中国などから金属シリコンを輸入している。つまり、海外における採鉱場の設備開発、鉱石の採掘に仕様する重機、輸送用車両、船舶、SiO結合切断用の電気など、これら全てのエネルギー消費を合計する必要がある。海外におけるコストだと無視するわけにはかない。

日本への輸入後も、金属シリコンの輸送、シリコンの精製や半導体化、ウェハ(薄板)の製造にもエネルギーは消費される。メガソーラーであれば、設置場所の整地や発電装置の組み立てなどで重機を使用し、資材の運搬などで多くのエネルギーが消費される。さらに、メンテナンス、10~20年後の解体・廃棄にもエネルギーは消費される。これらのライフサイクル全般を合計して算出すれば、エコであるなどあり得ないことである。

* 風力発電 : 設備製造に使用する化石資源と非効率性

世界の総電力を風力だけでまかなうとして試算すると(2017年9月3日:WUWT(wattsupwiththat.com)、通常サイズの風車5,000万基と、容量100キロワット時のリチウムイオン電池5兆個をアメリカ+カナダの全土に並べる必要があるとのこと。また、イギリスにおいて、ガソリン車・ディーゼル車を全廃して電気自動車にしてその電気を風力だけでまかなうと仮定すると、26,000基の風車と付属の蓄電設備が9万平方キロメートル必要となり、その面積はスコットランド全体よりも広くなる。これもまた非現実的である。

太陽光発電と同様に、風車用の鉄の製造には海外の鉱山での採掘に莫大なエネルギーが消費され、その鉱石を運搬する船舶も燃料を消費する。港に到着後、鉄鉱石を輸送し、溶鉱炉で還元して銑鉄を精錬加工して製品にする仮定で大量にエネルギーが消費される。風車に使うプラスチックも同様。

さらに、風車の土台に欠かせない大量のコンクリートの減量となるセメント製造と砂利の採取と運搬。また、計器類の製作と風車の設置費用。完成後の保守や修理にも相当量の化石資源と電力が使われ、その後の設備の寿命による解体と廃棄にも大量のエネルギーを消費する。風力発電では、発電機などにネオジムなどの希少金属を大量に使うため、希少金属資源の枯渇問題もある。

この様に、風力発電も設備の製造に多くの化石資源を使うため、化石資源の消費を減らす効果はなく、発電単価も高くなる。その差額を「補助金」でまかなうという、愚かな政策が政治主導でおこなわれ、マスコミも、稼働中の一面だけを捉えて扇動している。

但し、時計や電卓、さらに、電線を引きにくい離島や山小屋などの小規模電源としては、太陽光や風力発電も役に立つ場面はある。

また、最近開発された、ペロブスカイト太陽電池が普及すれば、屋根や屋上のみならず、ビルの壁やガラス窓、さらに人の服にまで装着でき、製造コストも大幅に易いため、都市全体が発電所となる可能性はある。しかし有望ではあるが、発電効率はほぼ同程度であり、太陽光のみで全エネルギーを賄うことはやはり不可能であると考えられる。

再生可能エネルギーのひとつと言われてきた木質バイオマス発電も有害性の方が高い。森林の減少、伐採後の放置による環境の劣化などが大きな問題である。「地球・人間環境フォーラム」など3団体が、日本がペレットを輸入する米国南部の生産現場を訪問して報告会を開いた。

バイオマス発電の燃料である木質ペレットの輸入量が急増しているが、木質ペレット工場の多くは貧困率の高い地域にあり、粉塵や騒音などで近隣住民に深刻な健康被害をもたらしているという。(編集委員・栗岡理子)

ペレットの生産・加工に伴って発生するCO2に加え、海外からのペレットの搬送で大量のCO2が発生する。さらに、木質バイオマス発電の温室効果ガスの排出量は、石炭火力発電を上回るという意見もある。日本にとっても決して他人事ではない。世界最大級の木質ペレット生産企業が日本の複数の大手企業と長期供給契約を締結している(Enviva Partners, LP社)。Enviva社は現在、年間620万トンのペレット製造能力を有し、さらに、2027年までに米国内で6カ所の工場を新設して生産量を現行の約2倍の1220万トンに引き上げる計画らしい。

但し、前述した全ての作業工程において、当然ながらCO2は排出されるが、私はCO2を問題視していないので詳しくは触れない。

とは言え、科学技術は進歩する。最も有力なのは核融合発電であろう。現在、世界の数カ所で大規模な実験塔がまもなく稼働する。また、量子力学の知見は大きい。「円偏光フォトガルバニック効果」を応用した太陽光発電が考えられている。太陽光を円偏光にしてトポロジカル絶縁体に照射すると、一定方向の電流が自然に流れるという現象で、Pn接合ような電場を利用しないためエネルギーの散逸が無いため高効率の太陽電池になる可能性がある。省エネ技術として、電子のスピンの流れで電荷の流れを伴わない「純スピン流」に信号を載せれば、ジュール熱を発生させないで計算や信号を送ることが可能となる。このような電子デバイスを作ろうとする、「スピントロニクス」と呼ばれる分野が期待される。

総括すると。実体は補助金の有無で判断できることと、その手段や製品のライフサイクル全般について消費エネルギーを合計して評価しなければ真実は見えてこない。技術は進歩する。革新的な新技術によってこれらの問題点が解消されることを願っているが、現時点においては、人類は新たなエネルギーを作り出せてはいない。