急性腰痛に対する整体療法の効果に関するレビューに一言 [医学・医療への疑問]

急性腰痛症に対する脊椎整体療法は、統計的に僅かに有意な効果と、逆に、痛みの増加、筋肉のこわばり、および頭痛などの有害事象が50% から 67%に認められたと報告されている。

この研究は、コクランデータベースより抽出した、26の無作為化臨床試験(RCT)の、系統的レビューとメタアナリシス。

メインアウトカムは、治療後6週間以内における、痛みのビジュアルアナログスケール(VAS)、およびその他の数値疼痛尺度(measured by either the 100-mm visual analog scale, 11-point numeric rating scale, or other numeric pain scale)。機能評価は、24 点ローランドモリス障害者アンケート、またはオスウェストリー障害指数(range, 0-100)、およびその他の有害事象を評価。対象となった26件より15件のRCTを特定 (患者1711名)。

VASは−9.95 (95% CI, −15.6 to −4.3)で、統計的に有意な改善を示した。機能についても、“pooled mean effect size”は −0.39 (95% CI, −0.71 to −0.07)で有意。一方、有害事象については前述したとおり。

要約のみを読んでおりFull Textではないので、残念ながら、有害事例についての考察は不明。尚、結論では、研究結果の不均一性が大きかったと述べられている。この点にこそ、元の研究の問題点が有る。

痛みが軽快した者と悪化した者の違いは如何なる理由によるものかは考察されていない。、「急性腰痛」という病名のみで十把一絡げにまとめ、患者を単純に分類してしまう。結果を推測統計学的手法で解析しさえすれば質の高い研究ができたと思い込んでいる。

相変わらず、RCTとメタアナリシスを行えば質が高い研究だと言いたいのであろうが、元の研究もこのレビューも臨床的には無意味。

結果の違いの原因は、痛みの原因となっている病態の違いによるところが大きいはず。個々の患者の病態を考えずに単純に無作為化することで、治療効果や適応性を的確に判断できなくなっていると言いたい。

つまり、「集団と個人のギャップ」を考えていない。

無作為化の効用として、試験結果に与える因子が平均的に分布する。また、未知の錯乱因子を人工的に確率的誤差に転化できるなどが考えられる。

しかしながらそれでは、集団に対する治療効果の「平均値」、つまり、「平均的特性」に関する推測であって、個々の患者に対する効果は調べられない。したがって、臨床的に重要な、患者個人に対する治療法の選択や効果の予測には使えない。

個々の患者に求められるのは平均値ではない。要するに、このような研究は臨床には役に立たないのである。

急性腰痛の原因を正確に診断できない事情はあるだろう。しかし、臨床的必要性から言えることは、発症の経緯や痛みの程度と性状の違いは重要な要素であり、病態の違いと治療法の判断、さらに、効果の違いに結びつく。

尚、個人的な意見として、急性腰痛に対して整体治療が有効となるのはごく一部ではないだろうか。

出典文献
Association of Spinal Manipulative Therapy With Clinical Benefit and Harm for Acute Low Back Pain.
Systematic Review and Meta-analysis
Neil M. Paige, Isomi M. Miake-Lye, Marika Suttorp Booth, et al ,
JAMA. 2017;317(14):1451-1460. doi:10.1001/jama.2017.3086

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