遅延起立性低血圧はその後の死亡率増加に関連する [医学一般の話題]

単一施設における遅延起立性低血圧(Delayed orthostatic hypotension; DOH)患者の10年間におよぶ調査で、DOHの患者の54%が起立性低血圧(Orthostatic hypotension ; OH)に進行してその死亡率は50%に達し、DOHの死亡率は28%であったと報告されています。

完全にフォローできたのは、DOH48名、OH42名、対照75名。31%がアルファシヌクレイノパチー(*))を発症。

出典文献
Gibbons C, et al.,
Clinical implications of delayed orthostatic hypotension: A 10-year follow-up study,
Neurology 2015.

起立性低血圧は10歳代に多く、めまいや倦怠感等が続くことで欠席がちになるなどの問題がありますが、原因は必ずしも明らかではありません。最近では、高齢者の起立性低血圧は動脈硬化が関連し、脳卒中や心筋梗塞を発症して予後を悪化させると報告されています。

中年の起立性低血圧と死亡との関連を検討した研究(Circulation)では。

45~64歳の男女約14,000名を対象にベースライン時の起立性低血圧の有無を調べ、13年間フォローして起立性低血圧と死亡との関連を前向きに検討しています。

起立性低血圧の基準は、起立負荷試験によって最大血圧値20mmHg乃至は最低血圧値10mmHg低下。ベースライン時において674名(5%)が起立性低血圧と診断。

13年間に1,693名が死亡。全原因死亡率は OH13.7%、正常者4.2%。人種および性差の調整後ハザード比 2.4( hazard ratio (HR) , 95% confidence interval [CI], 2.1 to 2.8)、リスクファクター調整後HR=1.7(95% CI, 1.4 to 2.0)。

心血管疾患の死亡率では、リスクファクター調整後HR=2.0(95% CI, 1.6 to 2.7)、および他の死亡はHR=2.1(95% CI, 1.6 to 2.8)。しかし、癌のオッズ比は1.1(95% CI, 0.8 to 1.6)で関連性無し。

起立時の血圧調整の異常から、自律神経系機能の低下が死亡率の増加に関与している可能性が考えられますが、明確ではありません。従来、起立性低血圧が生命予後に影響するとは考えられてはいませんでしたが、少なくとも、中年以後の本症は重大な病態である可能性が示唆されました。

出典文献
Rose KM, Eigenbrodt ML, Biga RL, Couper DJ, Light KC, Sharrett AR, Heiss G.
Orthostatic hypotension predicts mortality in middle-aged adults: the Atherosclerosis Risk In Communities (ARIC) Study.
Circulation. 2006 Aug 15;114(7):630-6.


α-シヌクレイノパチーは、レビー小体型認知症(DLB)、多系統萎縮症(MSA)、およびパーキンソン病(PD)などを含む神経変性疾患を総称したもので、その病理学的な特徴は、α-シヌクレインを含む蛋白質の凝集物が神経細胞内に集積・蓄積した状態です。しかし、その発現メカニズムについては未だに十分に解明されていません。

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