全膝関節形成術後の不良転帰が予測される患者に対するリハビリの効果とは [医学・医療への疑問]

全膝関節形成術後の予測不良転帰を有する患者を対象として、セラピスト主導の外来リハビリテーション(プログレッシブ目標指向の機能的リハビリテーションプロトコル、1対1の接触セッションで毎週変更)、または在宅運動のいずれかに分類して効果を比較したところ、両群に差は無かった。

参加者334名は、膝変形性関節症の術後6週間で、オックスフォード膝スコアに基づいて、全膝関節形成術後の予後不良リスクと定義(全体は4264名)。163名が、セラピストによる外来リハビリテーションに割り当てられ、171名は家庭運動ベースのプロトコルにそれぞれ無作為に割り当てられ、6週間、18セッションのリハビリテーションが実施された。

52週における、オックスフォード膝スコアのグループ間の差は1.91(95%信頼区間-0.18〜3.99)ポイントで、外来リハビリテーションアーム(P=0.07)を支持した。すべての時間ポイントデータを分析した場合、グループ間の差は2.25ポイント(0.61〜3.90、P=0.01)であった。平均疼痛では、グループ間に差異は認められなかった。

この研究の制限は、比較のための非治療群を含めなかったことが挙げられる。(著者も認めている)。

“Discussion”でも述べられているように、全膝関節形成術の1年後の患者転帰は、患者に適用される術後リハビリテーションの場所またはタイプの影響を受けないことがすでに明らかになっている。術後理学療法の有効性が低いにもかかわらず、個々の理学療法部門に特定のプロトコルが強く定着しており、さらに、リハビリテーションを提供するための最良の方法に関するコンセンサスは欠如している。

膝関節形成術後の回復は手術のでき如何で左右され、それは、術後のリハビリで変更できるものではない。患者に正しく伝えて状況を認識させ、理学療法士のレビューと家庭運動に基づくレジメンを通じてハンズオフリハビリテーションを提供するだけで十分である、という事実をこの研究結果が示している。

全膝関節形成術(人工関節全置換術)は膝の末期変形性関節症に対する一般的な治療法であり、英国では毎年100,000以上、米国では700,000以上に行われている。その内の、約20%が術後の結果に対する不満を訴えている(20~30%の患者に痛みが残る)。もし、手術を受ける前に患者に手術の動画を見せたとしたなら、果たして受けるだろうか。この手術を目の前で見た者としては、どんなに膝が痛かろうが受けようとは思わないが。

出典文献
Targeting rehabilitation to improve outcomes after total knee arthroplasty in patients at risk of poor outcomes: randomised controlled trial
BMJ 2020; 371 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m3576 (Published 13 October 2020)
Cite this as: BMJ 2020;371:m3576
David F Hamilton, David J Beard, Karen L Barker, et al,

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