小児虫垂炎の治療に手術はほぼ無用 [医学・医療への疑問]

小児虫垂炎における治療で、非手術(抗生物質)と手術について、成功率、治療関連障害、満足度、健康関連の生活の質、および合併症の違いを比較した研究の結果、双方に有意差は認められなかった。但し、小児虫垂炎の治療において、抗生物質だけによる非術的な管理は手術よりも障害日数が少なく、合併症が無い可能性がある(統計的に有意)。

2015年5月から2018年10月までに、米国7州10カ所の第三次小児病院で治療を受けた7歳から17歳までの1068人の小児を対象とした多制度非無作為化制御介入研究。フォローアップは、2019年10月までの1年間、1209人の患者のうち、1068人が研究に登録した。

抗生物質単独(n =370)または緊急(12時間の入院)腹腔鏡下虫垂切除術(n=698)。家族の選択によって決定。

子供が虫垂炎関連ケアによって、通常の活動に参加できなかった日数の合計日数 (予想差、5 日間) と、非手術管理は、最初の1年で虫垂切除を受けていない患者の割合を成功率として定義。結果評価のための、治療群間の差を調整するために、治療重みの逆確率(IPTW)を使用。

1年間の非手術管理の成功率は67.1%(96%CI、61.5%-72.31%)(P = 0..86)。非手術管理は、手術よりも1年で患者障害日数が有意に少ない(調整後平均、6.6対10.9日、平均差、-4.3日(99%CI、-6.17〜-2.43;P .001)。他の16個の事前指定された二次終点のうち、10は有意差を示さなかった。

完全にフォローアップされたのは、全体で75%、非手術群で77%、手術群では75%。

しかし、気になるのは、この要約には手術群の成功率が記されていない(?)。
さらに驚いたのは、今頃、こんな基本的なことを調査するのだろうか。これまでに臨床試験が行われないまま、手術が漫然と行われていたのだろうか。さすが、外科の歴史そのものだ。

そもそも、虫垂に存在するリンパ組織は、粘膜免疫で重要な役割を果たすIgAの産生に重要な場であり、腸内細菌叢の制御に関与している。IgAは、腸内細菌叢の維持に重要な抗体であり、虫垂は腸内細菌叢のバランス異常によって発症する炎症性腸疾患の制御に関わる重要な組織であると考えられている。「虫垂は必要無いから取ってしまった方が良い」などは、昔の考えにすぎない。

出典文献
Peter C. Minneci, Erinn M. Hade, Amy E. Lawrence, et al.
Association of Nonoperative Management Using Antibiotic Therapy vs Laparoscopic Appendectomy With Treatment Success and Disability Days in Children With Uncomplicated Appendicitis.
JAMA. 2020;324(6):581-593. doi:10.1001/jama.2020.10888

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