アスピリン誘発レゾルビンD1は化学療法性神経障害性疼痛を抑制する [医学一般の話題]

アスピリン誘発レゾルビンD1(AT-RvD1)は、化学療法誘発性神経因性疼痛(CINP)のパクリタキセル(PCX)モデルラットにおけるWDRニューロンの機械的誘発反応を選択的に抑制した。WDRニューロンの機械的に誘発された応答に対するAT-RvD1の抑制効果は、脊髄モルヒネのものと同等とのこと。

魚油などに含まれるエイコサペンタエン酸(eicosapentaenoicacid:EPA)などのn-3 系多価不飽和脂肪酸(polyunsaturated fatty acid:PUFA)には、以前より、心血管保護作用や抗炎症作用の報告が多数あったが、その作用は十分には解明されていなかった。最近になってEPAなどから代謝される生理活性物質の一つであるレゾルビンが同定され,その抗炎症作用が注目されている。

CINPは、抗腫瘍薬の一般的な副作用であり、パクリタキセル(PCX)は、治療後1〜6か月でCINPの推定有病率が70%と高く、癌治療の忍容性を制限している。PCXは、腫瘍細胞の増殖を阻害するチューブリン安定化因子ですが、軸索輸送を妨害することによって神経機能に悪影響をおよぼし、脱髄による神経障害を引き起こす。CINPのPCXモデルは、WDRニューロンの神経生理学的応答の顕著な変化と、脊髄後角の炎症誘発性シグナル伝達を駆動するGrin2b、およびサイトカインとケモカイン分子のmRNA発現の増加に関連している。PCXによって誘発されるCINPは、主に、機械的および低温刺激によるしびれ、火傷、異痛症などの感覚神経障害の症状を示す。

本研究結果は、レゾルビンシステムの活性化を介する、CINPの新しい治療法として期待される。

出典文献
Spinal neuronal excitability and neuroinflammation in a model of chemotherapeutic neuropathic pain: targeting the resolution pathways
Pongsatorn Meesawatsom, Gareth Hathway, Andrew Bennett, et al,
Journal of Neuroinflammation volume 17, Article number: 316 (2020)

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