骨髄浮腫はコラーゲン誘発関節炎の滑膜炎に先行する [免疫・炎症]

骨髄浮腫(BME)、滑膜炎、およびコラーゲン侵食の縦方向の関係を、コラーゲン誘発関節炎マウス(CIA)モデルを使用して骨侵食におけるBMEの役割を調査した結果、BMEはCIA発症中の関節炎症状や滑膜炎に先行すると報告されている。

破骨細胞(OC)、OC関連サイトカイン、および骨髄の免疫細胞の発現は、フローサイトメトリー、免疫組織化学、免疫蛍光染色、およびリアルタイムPCRによって決定し、 OCsの形成はin vitroアッセイを使用して推定。

MRIが検出したBMEは、関節炎および滑膜炎がない状態で、最初の免疫後25日目に70%のマウスに出現(n = 10)。28日目には、BMEは90%のマウスで発生し、関節炎の症状と組織学的滑膜炎は、その時点で30および20%のCIAマウスでのみ発生した(n = 10)。

BMEの出現は、骨髄OC数の増加と軟骨下骨表面に付着したOCの分布の変化に関連し、その結果、CIAプロセス中に軟骨下侵食が増加して海綿骨数が減少した。

BMEの出現後に明らかな骨髄環境の変化が確認され、高度に発現したRANKL、炎症性サイトカインとケモカインの増加、高度に活性化されたT細胞と単球などの複数のOC関連シグナルで構成された。

骨浸食は、関節リウマチ(RA)の機能悪化に関連する中心的な病原性事象。滑膜炎は、骨浸食の主要なトリガーと見なされ、線維芽細胞様滑膜細胞(FLS)は、このプロセスで中心的な役割を果たしている。通常のFLSと比較して、RA-FLSは独特の侵襲的な特性を有している。これらの細胞は過剰に増殖し、細胞外マトリックスを分解する炎症性サイトカイン、ケモカイン、およびプロテアーゼを産生して軟骨および骨に侵入すると考えられている。

しかし、この滑膜炎中心の概念は、RA患者のMRIにおける骨髄浮腫(BME)の発見に基づく骨中心の概念によって変更される可能性がある。

MRI検出のBMEは、当初、RAの早期診断のための組織学的炎症の敏感なマーカーと捉えられていた。しかし、その後の研究から、BMEがRAの侵食進行と密接に関連していることが示唆されている。疾患発症時のBMEは、1~6年後の関節損傷の進行を予測できる(1.2.)。BMEはRA病理の重要な部分であり、恐らく、浸食の初期の病態を直接表している。

BMEは骨炎とも呼ばれ、脂肪組織が炎症状態で骨髄に浸潤する炎症細胞に置き換えられることが示唆されている(2.)。滑膜炎中心の概念によると、BMEは、滑膜炎による滑膜組織と骨髄の間の炎症伝達の結果とされている。骨浸食が滑液包炎によって駆動される場合、軟骨変化は骨変化に選考するはずである。しかし、BMEの発生と浸食は初期のRAにおいて軟骨の薄化に先立つことが示唆されている。最も重要なことは、縦方向MRI研究によって、BMEと侵食進行との関連が局所滑膜炎とは無関係であることが示されている(3.)。さらに、.骨浸食は、滑膜炎の臨床的特徴を持たない関節においても認められている(4.)。

骨免疫学の新たな分野は、骨髄が免疫系の重要な部分であることを証明している(5.)。BMEの出現に伴い、T細胞、単球および炎症性サイトカインの数が骨髄において有意に増加した。これらのデータは、骨髄がRAにおいて、免疫寛容を破壊する「最初のヒット」のための重要な病理学的部位である可能性を示唆している。遺伝的要因と環境要因の相互作用の下で、特定の抗原が骨髄または他のリンパ組織の適応免疫応答を活性化して滑膜炎を引き起こす可能性がある。

本研究の重要な新しい発見は、BMEの出現が、CIAの開発中に骨髄「破骨形成環境」にリンクされていること。骨髄は、造血幹細胞の静止、増殖、分化および自己再生能力を制御する「ニッチ」で構成することが証明されている(6.)。骨髄微小環境信号は、OCsの形成および機能の調節に関与する(7.)。

RAにおける骨浸食に対する骨髄微小環境の重要性が強調され、BMEを「標的治療」戦略として考慮すべきであることが提唱されている。

このように、様々な疾患の発症機序や病態、さらに治療目標としても、「浮腫」の重要性が認識され初めている。

出典文献
The Bone Marrow Edema Links to an Osteoclastic Environment and Precedes Synovitis During the Development of Collagen Induced Arthritis
Fang Wang1, Aishu Luo, Wenhua Xuan, et al.,
Front. Immunol., 24 April 2019 | https://doi.org/10.3389/fimmu.2019.00884

二次文献
1.
Boyesen P, Haavardsholm EA, van der Heijde D, Ostergaard M, Hammer HB, Sesseng S, et al. Prediction of MRI erosive progression: a comparison of modern imaging modalities in early rheumatoid arthritis patients. Ann Rheum Dis. (2011) 70:176–9. doi: 10.1136/ard.2009.126953

2.
McQueen FM. Bone marrow edema and osteitis in rheumatoid arthritis: the imaging perspective. Arthritis Res. Ther. (2012) 14:224. doi: 10.1186/ar4035

3.
Nieuwenhuis WP, van Steenbergen HW, Stomp W, Stijnen T, Huizinga TW, Bloem JL, et al. The course of bone marrow edema in early undifferentiated arthritis and rheumatoid arthritis: a longitudinal magnetic resonance imaging study at bone level. Arthritis Rheumatol. (2016) 68:1080–8. doi: 10.1002/art.39550

4.
McGonagle D, Tan AL. What magnetic resonance imaging has told us about the pathogenesis of rheumatoid arthritis–the first 50 years. Arthritis Res. Ther. (2008) 10:222. doi: 10.1186/ar2512

5.
Walsh MC, Takegahara N, Kim H, Choi Y. Updating osteoimmunology: regulation of bone cells by innate and adaptive immunity. Nat Rev Rheumatol. (2018) 14:146–56. doi: 10.1038/nrrheum.2017.213

6.
Morrison SJ, Scadden DT. The bone marrow niche for haematopoietic stem cells. Nature. (2014)505:327–34. doi: 10.1038/nature12984

7.
Amarasekara DS, Yun H, Kim S, Lee N, Kim H, Rho J. Regulation of osteoclast differentiation by cytokine networks. Immune Netw. (2018) 18:e8. doi: 10.4110/in.2018.18.e8

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