COVID-19死亡者数・患者数推移の違いは人種によるものか [医学一般の話題]

COVID-19の死亡者数の推移について、札幌医科大学医学部 附属フロンティア医学研究所 ゲノム医科学部門」の調査による「人口百万人あたりの新型コロナウイルス感染者数の推移【国別】」のグラフを見ると、、その増加傾向は中国、韓国、日本およびインドネシアが特に低い。中国と韓国は既に平坦化しており、日本は未だ増加中だがインドネシアと同様に上昇角度は低い。

極端に急上昇しているのは、イタリア、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカおよびトルコ。イタリア、ドイツ、フランスは上昇角度は下がりつつあるが、アメリカ、イギリスおよびトルコは未だ急上昇中。ブラジルは低い方のグループに入るものの、比較的急上昇中。

世界平均の推移を境にして、大きくはこの2グループに別れる。中国は世界平均のの相当上を推移していたが2月頃より平坦化し、3月22日頃より世界平均の上昇とは大きく下方に離れた。韓国は依然として上昇を続けているが、世界平均よりもカーブは緩やか。世界平均のやや下に、サウジアラビア、アルジェリア、西アフリカが入る。日本の上昇傾向は続いているものの、数値的には平均の大分下を推移している。

このグラフの傾向から、欧米の諸国と日本などとの違いは、恐らく遺伝子の型が関与しているものと推測される。もしそうならば、今後、日本において感染爆発は起きない可能性が高い。但し、ウイルスのRNAの一部に変化が起きている可能性も考えられるがイタリアの報告では否定されている。

クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」から搬送された、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者、104例についての報告(2020年3月24日;自衛隊中央病院ホームページ)と、アメリカの様子との違いからも感じられる。

クルーズ船の患者の報告を記すと。
観察期間を通して全く症状や所見を認めなかった症例は全体の31.7%で、軽症例が41.3%、重症例は26.9%。無症候性および軽症例でも、約半数に胸部単純CT検査での異常陰影が認められた。陰影は両側末梢胸膜下に生じるすりガラス様陰影が特徴で、胸部単純レントゲン写真では異常を指摘できない症例が多かった。

無症候性および軽症例で、CT検査で異常影を認めた患者の約3分の2はそのまま症状が変化することなく軽快し、残りの約3分の1は増悪した。増悪する場合の画像変化は、すりガラス様陰影の範囲が広がり、徐々に濃厚なair-space consolidationを呈した。

無症状あるいは軽微な症状にもかかわらずCT検査で異常陰影を認める病態を「Silent Pneumonia」とし、「Silent Pneumonia」から「Apparent」に悪化する際の特徴は、発熱や咳嗽の増悪や呼吸困難の出現ではなく、高齢者ではSpO2の低下、若年者では頻呼吸のが出現が多い。症状増悪は初発から7~10日目で、比較的病状はゆっくりと進行した。

この報告の時点では観察期間中に死亡例はなく、3月24日時点では全員退院している。中等症~重症化しても、適切な酸素投与を実施するなどの対応によって救命可能な症例が多かった。

最終的には、クルーズ船の患者数は712名、死亡者は11名、死亡率1.54で、国内全体(4月9日)の死亡率1.78より低い(患者数 4,768名、死亡数 85名)。

これに対し、アメリカの患者の詳細は判らないので、数値で比較することはできないが、
救急の指導医として勤務している日本人医師の話による悲惨な状況は、対象となっている患者層の違いもあるだろうが、全く別の疾患ではないかと思う程だ。

人工呼吸器を外して自分で呼吸できるようになることを「戻ってくる」と表現しているらしいが、それはほんの一握り。回復するかどうかは別問題で、特に、お年寄りのほとんどがそのまま亡くなる。重症化してから亡くなるまでの時間は1週間程度だが、これはICU(集中治療室)の医師が何とかもたせた結果であり、人工呼吸器やECMOがなければ2、3日で亡くなる。さらに、特異なのは、全く重症化していなかった患者が、突然、わずか1~2時間で激変し、人工呼吸器を繋げる間もなく亡くなる人もいる。このような変化は容体をこまめにチェックしていても予期できないとのこと。

このアメリカの状況は、米ニュージャージー州で、感染症専門医として勤務する日本人医師・斎藤孝氏に話を聞いた、ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ氏のリポートから抜粋したもの。患者数がさらに膨大なニューヨーク州はこれ以上に悲惨な状況だろう。人知れず家で死亡している人も多く、このような人達は死亡数にカウントされないため、実際の死亡数、死亡率はさらに高いはずだ。

日本においても、志村さんの容体が急激に悪化したように、重症例はアメリカの重症患者と違いはないものと思われる。しかし、アメリカではその人数が膨大で、病院の前にはトレーラーが待機して遺体を収容し、焼却後遺族には書類のみが送られる。アメリカには火葬後の灰を埋葬する習慣が無いため、そのまま処分されるためだ(世界のほとんどの国が同様の考えで、焼却後の灰はゴミとして認識されている)。

consolidationとは、含気腔 air space が液体、細胞成分、組織などで置換された状態を指す病理組織学的用語。X線学的には、気道の閉塞や狭窄で二次的に含気腔が無気肺になっている状態と、液体や細胞成分で置換されて空気がない状態とを区別することはできない。

追伸

東京都における新型コロナ陽性患者数の推移(4月18日現在)から

このグラフを見る限り、東京都の感染者はすでにピークに達し、しばらくの間は上下しつつも平坦化を続けて間もなく減少すると予想される。

自然現象もヒトが作る工業製品にも、全てライフサイクルがある。その経過は、ロジスティック曲線を描いてS字カーブを示すのが常のこと。増加と同時に増加率を低下させる要因が現れる。今回の場合では、多くの人々が感染することで免疫の壁ができ、それが拡散することによって感染の拡大は終息する。但し、再び上昇傾向が現れて増加率が高くなりすぎれば、その後、カーブは上下動を繰り返すカオスとなることもあり得るが、恐らく、それはないと思う。
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